共謀罪に対する刑法学者の反対声明 (転載)
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~adachi/cgi-bin/note/tackynotesp.cgi
今日の午後3時に法務省記者クラブで記者会見し、「『共謀罪の新設を容認する刑法等の一部改正案』に反対する刑法学者の声明」を呼びかけ人を代表して、発表した。参加した新聞社は、朝日、毎日、日経と共同通信であり、多くはなかったが、それなりの反応はあったと思う。特に、この法案をそのまま適用すれば、自民党や財界も処罰の対象になるのだという説明は、この法案の広がりを表し、一般刑法化の推進を表すものであることが認識されたであろう。
なお、毎日新聞は、共謀罪が審議入りしたことを伝える記事の最後に、「一方、中山研一・京都大名誉教授や小田中聡樹・東北大名誉教授ら刑法学者54人が24日、共謀罪新設に反対する声明を出した。『意思だけで処罰する共謀罪は、刑法の基本原則を否定し、当局の主観による取り締まりを容認することになる』と強調している。」と書き、声明を客観的に報道した。
声明の全文は次のとおりであるが、賛同署名は、54名である。
「共謀罪の新設を容認する刑法等の一部改正案」に反対する刑法学者の声明
「越境的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を批准するために、そこで要請されているものを国内法化するものとして、第159回国会に提出され、継続審議となっている「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」は、現在開会中の通常国会で審議が予定され、近々衆議院法務委員会で審議が開始されようとしている。その法案において、共謀行為を単独で処罰対象とする共謀罪が新設されようとしている。
法案は、組織的犯罪処罰法に第6条の2を新設し、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀」した者は、「死刑又は無期若しくは10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」については5年以下の懲役又は禁錮、「長期4年以上10年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪」については2年以下の懲役又は禁錮に処すると定め、「共謀罪」の独立処罰の新設を提案している。
「共謀」とは、犯罪を共同で遂行しようとする意思の合致(謀議)であり、その結果として成立した合意である。ところで、犯罪とは、一般的に、犯罪を決意し、その準備に取りかかり、さらに実行に着手し、結果を発生させることであるが、その処罰は、結果を発生させた既遂犯処罰が原則であり、実行に着手しているが結果が発生しなかった未遂犯が例外的に処罰され、さらにその例外として、特に保護法益が重大な場合に、準備行為を行ったけれども犯罪の実行には着手していない予備罪が処罰されている。
ところが、「共謀」は、準備行為も行っていない意思だけにかかわるものであり、これまでは処罰の対象外であった。それは、「思想は税を免ぜられる」の原則に基づくものであり、「共謀」の独立処罰は、この原則を真っ向から否定するものである。
条文では、「団体」や「組織」を要件の一部としているが、その対象を組織犯罪に限定していない。長期4年以上の懲役又は禁錮が規定されている犯罪については、組織犯罪とは無関係に行われたが、2人以上の団体活動で行った場合に、共謀罪が成立することになる。そもそも「共謀」は2人以上の者による相談であり、団体認定をしなくても、この条文に当てはまるであろう。
法案は共謀罪の独立処罰を組織的犯罪処罰法の一部改正としているが、それは、思想の処罰という共謀罪の独立処罰の本質を覆い隠すものである。長期4年以上の懲役又は禁錮の刑が定められている罪は614に達し、団体や組織で限定できないのであれば、一般犯罪そのものが対象となるのである。それは、刑法そのものの改正であろう。
また、「共謀罪」の独立処罰は、犯罪認定の主観化を招き、取締り当局の主観による取締りを容認することになるであろう。このような状態を容認した場合、健全な市民社会はどこにいってしまうのであろうか。
私たちは、健全な市民社会を守り、刑法の基本原則を守るためにも、共謀罪の独立処罰を容認する「刑法等の一部改正案」に強く反対する。
右声明する。
2005年6月24日
呼びかけ人
京都大学名誉教授 中山研一 法政大学名誉教授 吉川経夫
東北大学名誉教授 小田中聡樹 龍谷大学教授 村井敏邦
東北大学教授 斉藤豊治 関東学院大学教授 足立昌勝
九州大学教授 内田博文 大阪市立大学教授 浅田和茂
|