法制審議会刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  平成14年10月9日(水)  自 午後1時30分                        至 午後4時30分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題    いわゆる国連国際組織犯罪条約の締結に伴う罰則等の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議    事 ● お待たせいたしました。予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会の第2回会議を開催いたします。 ● それでは,早速審議に入りたいと思います。  本日は,前回もお知らせいたしましたけれども,特に進行についての御意見等ございませんでしたならば,要綱(骨子)の番号順に第一の「組織的な犯罪の共謀」から議論を進めたいと思います。そして,それが一段落いたしましたならば,次に要綱(骨子)第二の「証人等買収」の罪について議論し,もし時間があるようでしたならば,第三の「犯罪収益規制等」関係について議論を進めるというように時間の配分を考えながら,その範囲内で要綱(骨子)の順に従って具体的に議論を進めたいと存じますが,そのような進行でよろしゅうございましょうか。  それでは,要綱(骨子)第一の「組織的な犯罪の共謀」の罪に関しまして議論したいと思います。前回同様,どなたでも結構です。どうぞ活発に御発言を賜りたいと存じます。 ● 前回,○○幹事の方から,国際的犯罪,トランスナショナルな犯罪について規定するというのが条約ではないかという質問がありまして,それに対して事務当局の方から,第34条2項でしたか,「国内法において……国際的な性質又は組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める」というふうになっているので,今回の要綱を作ったと,こういうお話をいただいたと思うのですが,この34条2項に関して,ちょっと私どもで,正確ではないのですが,終わった後少しいろいろなところから聞いたところ,解釈ノートというのが別に出ていて,その解釈ノートによると,すべての犯罪について国際的な形で関係なく定めるのだという意味ではないのではないかということを聞いたものですから,その辺の解釈ノートを含めました34条2項の解釈について,ちょっと御質問したいのですが。 ● 今の○○委員の御質問の点でありますけれども,私の持っております資料は少し古くて,99年のものですが,その当時の段階では34条は現在の1項と3項しかなくて,2項は入っておりませんでした。それが,2000年の最終案では挿入されていて,何らかのいきさつがあったのであろうと思いますし,それが解釈ノートに現れているはずでありますけれども,何か卒然として挿入された規定のような気がするということだけを申し上げたいと思います。 ● マネー・ローンダリングに関心をもち,関連資料を読んでいるのですが,1999年から2001年にかけて,マネー・ローンダリングに関し,EUの域内で「共通の立場」や「草案」が「EU官報」に発表され,加盟各国政府に対して,マネー・ローンダリング罪についての国内法の整備のための「資金洗浄基準」の改正勧告するというように,急テンポで動いています。従って,関連資料をスピードアップして集めないといけないという感想を持っています。私は,残念ながら,英文の資料については対応はできておりませんが,独文の資料で情報を得まして,最近「罪と罰」に寄稿しました。 ● 注釈書との関係につきましては,今準備しておりますけれども,一方でお考えいただきたいのが,国内法として整備いたします場合に,一つは国外犯処罰との関係で,例えばこの条約におきまして,二以上の国において行われる場合でありますとか,一の国において行われるものであるが準備等実質的な部分が他の国において行われる場合,あるいは二以上の国において犯罪活動を行う組織的な集団が関与する場合,あるいは他の国に実質的な影響を及ぼす場合というのが,こういう場合は必ず国際的だということが言われておるわけでございます。  一方で,外国で行われた犯罪ということを考えました場合に,例えばアメリカ国内におけるコンスピラシーであって,アメリカ国内における犯罪を謀議したという場合に,それに国民が関与しておりまして,その国民が日本にいた場合に一体どのようにするかという問題等もございまして,そういう国外犯ということで考えました場合に,果たして国際性の要件という形で切り分けていくことがかなり難しい問題を提起してくるのではないかという問題や,あるいは今申し上げましたような意味における国際的な共謀,国際性を持つ犯罪ということでありますと,今度はこの法律は間違いなく国内法として作るわけでございますので,そうしますと純粋な国内犯,条約の3条2項の定義でいえば国際性には当たらない,つまり,日本国内において例えば組織的な殺人等を行うことを共謀するということは国内的には全くお構いなしにする,典型的には今申し上げたような例でございますけれども,国内において同等の危険性を及ぼす事態に対しまして国内法的には全く手当てをしないという,そういう国内法制というのはまたいかがなものかという実質論もあるわけでございます。 ● 少し調べないと正確にお答えできない部分がございますので,調べた上で詳しく御回答ということにさせていただきたいと思います。 ● ○○委員,何か更に御質問ございますか。 ● 先ほどのような質問をしたのは,条約の仮訳の方を見てみますと,例えば5条などでは必要な立法その他の措置をとるというふうになっていて,目的規定のような形のものが一つありますね。「金銭的利益その他の物質的利益を得ること」の目的というのが入っていたりしているものですから,そういうことを含めたり,あるいは犯罪組織というか,そういうものがかかわっているという状況,例えば第2条の用語のところを見ても,(a)のところで,「「組織的な犯罪集団」とは三人以上の者から成る組織された集団」というふうに言っているわけで,その「組織的な犯罪集団」という用語ですとか,先ほど言いました物質的利益目的というようなことがいろいろ入ってきて,そういうものに対する犯罪化をして,それらの活動を阻止していく,こういう構成になっているような気がするのですが,この34条2項があるということによって,ある意味でいうとそういう部分が消え去って,通常の団体性といいますか,そういうものだけでいいのだという形になっているのか,あるいは個人的な犯罪でもそういうふうにすべきだというふうになってしまうとなると,何となく34条2項の一つによって肝心のところが消え去ってしまうのかなという感じがちょっとするものですから,どうも条約を読んでいても整合しないというか,気持ちがすっきりしないというところがあるのですね。その辺のことを,ひとつ今回議論をして後に,先ほど修正案というのも出ましたけれども,いろいろ議論してよりよいものにしていこうというような場合に,ある程度そういうものも視野に入れて議論ができないと,もういいのだと言われてしまうと,そうかというふうになってしまいかねないので,その辺りがいかがなものかというのを少し探りたくてお聞きしたわけです。 ● 部分的なお答えにとどまることになってしまうかもしれませんが,34条2項は一般的な国内法の定め方について規定していると理解しているわけですが,もちろん犯罪化義務というのがかけられた条文のそれぞれの解釈といいますか,条約の趣旨というものを考えて,その中で適切なものを作っていくということになろうかと思うわけでございます。その中で今一例として委員の方から掲げられた「金銭的利益その他の物質的利益を得る」ことの目的というこの要件,一種の限定的なといいますか,目的ですから,そういう要件はどのように反映される余地があるのかということだと思いますけれども,この「金銭的利益その他の物質的利益を得る」目的という用語の意味について言いますと,これは非常に広く解されているところです。  例えば,児童ポルノによって結び付けられている集団の構成員が,わいせつ物をやり取りするような,そういう性的欲望を満たすようなこともこの目的に入るという解釈がされておるところでございまして,そのように非常に広い目的であると解されています。もう一点,少なくとも今回御提示しております要綱(骨子)によりますと,「団体の活動として,当該行為を実行するための組織により」などの非常に違法性の高い要件を国内法との整合性の観点からかけております。そうすると,そのような非常に高い違法性の要件がかかる範囲では,仮にこのような目的がない同種犯行があった場合も同様に処罰するのが整合的なことになるだろうということから,少なくとも5条の関係ではここの目的というものは国内立法上特段の顔を出してこないということになる,そう理解をしておったところでございます。三人以上という点につきましても,その「団体の活動として」という要件がかかってくる中で,おのずと実体はそういうことになってくるだろうというふうなことになるわけでございまして,いずれにいたしましても各犯罪化条項の犯罪化の具体的な内容の中で,具体的な整合性を検討してきたつもりでもございますし,またこの場でも議論したいと思います。 ● ある意味で中身の議論にもなっているわけですけれども,「団体の活動として」という点については,以前組織犯罪を議論したときには,二人以上ということが団体性というふうになっていたと理解しているものですから,そういう意味では国際的にこの三人以上と言っているのとはちょっと意味合いが違うのではないかというふうに思ってきまして,それは後ほど議論することになるでしょうけれども,共謀のみをターゲットにするというふうに今回なるわけですから,今まではある意味で殺人なら殺人という行為がそれなりに外形的に現れるという状況があったわけですけれども,今回は共謀というだけでの団体性とは何なのかというのを,今までの現にある組織犯罪立法の条文そのままで共謀罪もいいのかという点もちょっと問題があるかなという感じがしているものですから,そういうふうになると国際条約ではめられている枠というのがどの辺ぐらい,伸び縮みと言うと変ですけれども,ある程度できるのかということを少しはっきりさせたいといいますか,もう少しこの中で余裕があるというようなことを得られたら,いろいろ議論しやすいかなということもあって,私の意見を申し述べているのですが。 ● 今の御意見で,逆に文理上厳格に突き詰めてまいりますと,今回,御提案させていただいております共謀罪というのは,ある面,条約の義務を果たしていないと申しますか,3人以上の共謀であればそれで足りると,一切を除くということにもなりかねないのではないかという気持ちもいたします。  それともう一つ,先ほどの物質的利益という点につきましても,端的に申し上げましてそれに相当しますような我が国の国内法上の概念がちょっとないということでもございまして,今回,できるだけ法律の構成要件的にもこれまでの既存の法体系の中で混乱なり誤解等のない,確立したと申しますか,そういった概念を取り込むことで,全体として条約の義務を果たそうとしているわけでございます。  その意味で,例えば今回の共謀罪と結社罪ということでございますと,法制上結社罪が絶対あり得ないかといえば,それは大陸法の国々が皆さん採用されているわけでございまして,日本だけが絶対あり得ないというのは,これまたおかしな話ではございます。ただ日本の場合,刑事罰則としてそういう結社罪という形で一般的にはこれまで犯罪化がなされていないといったことを考えますと,共謀ということにつきましては一部の罪に共謀罪が既にあるということと,今回共謀罪ということでは事前共謀ということになるわけでございますけれども,それ自体様々な犯罪類型につきまして既に実務的にも,もちろん学問的にも確立しておるという,内容的にもはっきりしておりますので,そういったことから現行法制のある意味での親和性ということで,このような共謀罪という形での御提案をさせていただき,また組織性につきましても,全体として条約上の義務を果たせる形ということで組対法上の組織性というものを付加させていただいたということになるわけでございます。 ● これ,ちょっと私も考えていて,今おっしゃられましたけれども組織犯罪対策法の改正といいますか,そういうものになるのか,どういうところに……。これは,後で立法形式の問題もいろいろ議論になるのかもしれませんが,どういう枠組みで入るのかなというのも少し関心がありまして,組対法の改正だと何か入れ込むのもなかなか難しいところもあるかなという感じもしないでもないのですが,その辺はどういうふうに考えているか,もう少し,事のついでというと変ですが,お聞かせ願いたいと思うのです。 ● 本来,改正形式は御答申を受けてからでないと考えられないわけですが,例えば今御提示しておる要綱(骨子)の組織的犯罪の共謀というのを見れば,現行組織犯罪処罰法が使っております加重のための要件をそっくりそのまま引っ張ってきているわけでございまして,その法律の枠組みに入れるというのが一番素直な考え方ではなかろうかなと思っております。 ● 今のお話と関連いたしまして,○○委員の御関心は,かつて論じた組織犯罪処罰法,それと今回の国際性を持った組織犯罪法との関係はどうなっているのかということが一つ御関心の対象だろうと思いますが,私がそれに答えるつもりではないのですけれども,お尋ねして確認しておきたいのは,今回の要綱(骨子)第一の一に使われております字句は,現在の組織犯罪処罰法の文言とよく似ております。ただし,組織犯罪処罰法の方では,団体についても組織についても条文の中で,場合によっては括弧書きの形をとって,一種の定義が示されておるわけですが,要綱(骨子)にはその部分は表れておりませんが,この点についてはどういうように考えればよろしいのでしょうか。 ● これは,先ほどの立法形式というお話になるかもしれませんが,端的に申し上げまして,ここで用いておりますのは現行法制上の用語ということでございまして,この言葉がこういう形で使われておりますのは組対法をおいてないわけでございまして,正にそのとおりの意味において使わせていただいておると。また,それだけに立法形式についてここでどうなるということは申し上げられませんですが,技術的にとか,これは美観の問題かもしれませんが,刑法に規定できるような内容ではございませんし,逆に混乱と申しますか,用語の解釈について別意に解されることのないようなという辺りも,立法をどういう形でさせていただくかという際の一つの要素であろうと考えております。いずれにしましても,ここでは細かく括弧書きの定義規定等はございませんが,組対法における用語と同じ意味において用いております。 ● 事務担当者として弁解いたしますと,最初は要綱(骨子)にこの用語の意味は組織犯罪処罰法と同じであるというのを付記しようかどうしようか,ちょっと迷っておったのですが,実際括弧書きで入れると相当全体が読みにくくなるおそれがあったので,括弧は外したというものです。  付記するのが本当は正確だということは,この場で要綱(骨子)の内容を説明する段階で併せて説明することによって,議事録も公開されますし,それで勘弁していただこうかなと考えたところです。前回の議事録に入っておると思うのですが,用語は組織犯罪処罰法と全く同じ意味で使っておるというふうに御理解いただきたいと思います。 ● 正に○○関係官が言われたとおりの関心がありまして,前の組対法のときの議論そのものは,ある意味でいうと国内における組織犯罪の実態がかなりあって,それにどういうふうに対応していくかという,その辺の議論からその枠組みを作っていったというふうに考えているのですが,今回は国内的なそういう状況ではなくして,国際的な条約というものによる義務化といいますか,ある意味でやらざるを得ない状況になっているというふうに言われているものですから,そうなってくると,前回の立法の必要性を議論した上での枠組み作りと,今回そういう立法の必要性が直接結び付いているわけではないのだけれども,国際的な意味では日本がそこに一緒になっていかざるを得ないという,こういう状況というふうになってくる枠組みとが,同じ枠組みなのか,同じ枠組みで作るべきものなのかどうかという問題は少し何かあるかなというふうに思っているのです。ですから,その辺の立法の必要性といいますか,そういう辺りも含めたものと,先ほど言いました結局国際的に何が要請されているのかというのは,ある程度つかみ切れるか。  ○○委員がおっしゃったように,ある程度国際条約にこたえていないのだということになると,日本の国内法の今までの刑事法の原則をある程度見据えながら,もう少し違った規定もあり得るのかとか,議論ができるような気がするものですから,その辺も少し立法形式という形でちょっとお聞きしてみたのですがね。 ● 今回の国際組織犯罪条約で「組織的な犯罪集団」であるとか,あるいは「組織された集団」という用語が使われているわけですが,この条約の2条にそういった用語についての定義といいますか,定義のようなものが置かれているわけであります。  (a)では「組織的な犯罪集団」,あるいは(c)では「組織された集団」といった概念についての規定があるわけですが,御覧いただくと,特に「組織的な犯罪集団」の方では,かなり抽象的な書き方がしてある。集団といったことについては,そこでは直接規定がなくて,(c)の方を見ると「組織された集団」ということについての規定があると。ただ,(c)の方を見ても,必ずしもいわゆる積極的に組織された集団とはこうであるという定義付けをするというよりも,むしろこういうふうなものは除くといったような消極的な書き方をしている部分もあるといったようなことなわけであります。  この辺は,やはりこういった集団であるとか,あるいは犯罪集団であるとか,そういった規定なり概念を議論する上で,少なくとも国際的に何をどう決めるかという議論をする上では,必ずしも国際的に全部細かいところまで決め切る,定めてしまうというのが現実にはなかなか難しいところがありまして,むしろその辺の概念はそれぞれの国のいろいろな法体系であるとか,それまでに使っていた概念であるとか,そういったものをある程度使わざるを得ないという側面があるのだろうと思います。ただ,少なくともコアの部分といいますか,基本的にはこういうものは対象にしなさい,あるいはこういったものを除いてはいけないといったような,ある程度消極的なところで範囲を決めるといったような形で定められているのだろうというふうに理解しております。  そういう中で,それを具体的にそれぞれの国で法律にしていく場合には,やはりこれまでそれぞれの国で使われていた概念,あるいはそれぞれの国でいろいろな立法の中で定められていた規定というものをベースにして,その条約の趣旨に合致する形で定めていくというのが適当なのだろうというふうに考えているわけでございまして,我が国の場合でいいますと,先ほど来お話の出ております組織的犯罪処罰法で,正にそういう組織犯罪と対抗するために,組織的な集団といいますか,団体といったものを定義付けて,加重処罰なりいろいろな規定を置いているということを踏まえて,今回この条約を担保する上ではその概念を用いながら,共謀といった罪を設けるのが適当ではないかと考えたということでございます。 ● 今回の関係で申し上げますと,5条を見ますと条約自体にはいわゆる「共謀」という言葉が出てこないように思うのですね。ところが,今回の立法では「共謀」という言葉が出てきていますが,この辺りのところはどの射程範囲に入るのかというのが非常に分かりにくい。とりわけ陰謀との関係はどう違うのか,あるいは予備とどう違うのかというところを理解しないで議論してもしようがないかなという気がしていますので,もし公式的な見解があればお聞かせ願いたいと思います。 ● 公式的と言えるかどうか分かりませんが,条約は第5条1の(a)の(@)で,「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること」というふうになっておりますが,ここで要綱(骨子)は「共謀」という言葉で規定しておりますけれども,その共謀とはどういう意味かということになりますと,これは前回も概略御説明申し上げましたが,二人以上の者が特定の犯罪の実行,罪に当たる行為の遂行,これを合意することであると。その合意するということを,我が国のこれまでの法制の中では「共謀」と,あるいは条文によっては「陰謀」という言葉で規定してきている,そのように理解されている用語を用いたところでございます。 ● 今の点に関連しまして,ちょっと御質問させていただきたいのですけれども。  私ども裁判所の立場といたしましては,やはり新しい立法というものを考える上では,解釈上疑義が生じないということを非常に大切にしておるものですから,その意味でちょっと確認させていただければと思うのですが。  今のお話ですと,予備・陰謀と共謀との関係というのは,陰謀というのもそういう意味でいえばここの条約で言われている合意の一つで,ここで言っている共謀とはほぼ同じような趣旨でとらえられているのかなというふうに理解させていただきました。まずそれでいいのかというところと,それと今回,共謀罪の対象となっております重大な犯罪ですけれども,この中には既に予備・陰謀罪が定められている罪がかなりございます。少なくとも,予備・陰謀罪が定められている罪について組織的共謀というものを定めるということになると,その相互関係はどうなるのかというところが恐らく問題になってくるのかなと。ですから,そもそも陰謀罪のほかに組織的共謀を認める意味がどの辺にあるのか,あるいは予備・陰謀の共謀ということも,これはそれこそ予備・陰謀罪の中にも今回重大な犯罪の中に含まれているものもございますので,予備・陰謀の共謀というものも念頭に置いているのかどうか,その点を教えていただければと思います。 ● 共謀と陰謀と予備の関係ですが,ここで言う共謀は予備・陰謀罪の陰謀と同じような意味であるという理解で基本的に結構であろうと思っております。正確にいいますと,個々の法令ごとに若干の解釈の幅というのは,法律として公布された以上出てきてしまうのはやむを得ないことですが,その基本は,要するに犯罪の遂行の合意があるという意味においては共通しておると理解しております。  それから,次の2つ目の予備罪とか陰謀罪についての組織的共謀というものがあるのかないのかという点ですが,まず,予備罪につきましては,ある犯罪を犯す目的で予備をするということですから,基本的には予備をしようという共謀をすると,その先にある犯罪をしようとする共謀と重なってきてしまうのだろうと,したがって予備だけをしようとしてその先の犯罪をしないという共謀というものが想定できるかということになろうかと思います。この点につきましては,自分が予備をするということになりますと,その先罪を犯すということまでつながっていってしまう類型,すなわち,いわゆる自己予備類型については予備罪の共謀というものは想定できないだろうと思っております。  それに対して,予備罪の場合には,いわゆる他人予備という類型がございまして,他人がその犯罪を実行するための準備にかかわる,これにつきましては,組織的な態様なり不正権益の目的で予備をするということの共謀をする,つまり共謀した者の行為は予備で終わるという場合でございますね,そういう場合については,予備罪についての組織的共謀というものはあり得るだろうと考えておるところでございます。  次に,共謀罪や陰謀罪につきましての組織的共謀があるかということになりますと,共謀罪につきましては共謀の内容がそのまま実行されれば共謀共同正犯になる,つまり,正犯的な関与の場合と想定しておりますので,いわゆる他人予備類型はない。共謀罪の共謀というものは共謀に係る本犯の共謀というものと同じことになる,したがいまして,共謀罪の共謀というのはないだろうと,そういう理解をしております。 ● 実態においてもそうだと思われますのと,共謀の共謀はやはり純然たる共謀ではないという理解をしておりまして,特別に,例えば教唆の教唆は教唆であるというふうな規定でも設けることとするのであればともかく,ここでは共謀のみにとどまることの共謀は共謀という整理はいたしておりません。 ● 今のお答えでもう明らかなのだと思うのですけれども,念のための確認ですが,そうすると陰謀の共謀も基本的には考えておられないということでよろしいわけですか。 ● 陰謀と共謀は同じような性質という理解ですから,御指摘のとおり考えております。 ● そうすると,予備の共謀は他人予備という,他人関与型の予備,これはあり得るということですね。理論上は確かにあるかと思いますけれども,この条約ないしは立法の動機は,そういうこと本来の犯罪,言ってみれば正犯というのですかね,その犯罪の発展過程において抑えてしまおうと,こういうところなわけですね。そうすると,予備は予備として一つの発展過程,しかも考え方によっては予備自体を最終目的とする共謀というのは,先ほどの他人類型ということを言われましたけれども,それ自体いささか理解に苦しむ。やはり,本来の最終目的の犯罪を目指したものでこそ価値のある共謀なら共謀。そうなると,予備罪それ自体の共謀ということ,これが仮にこのとおりだったとして,これから読み込ませるというのも,ちょっとただし書の「実行に着手する前に」ということの表現も併せて考えると,いささかいかがなものかと私的には感ずるわけです。  更にそれを極論すれば,未遂罪も一つの犯罪なわけですね。そうすると,未遂罪の共謀などというのはもともと考えていないと。それと似たようなものなので,やはり予備罪を共謀するということはいささか……。ということとあわせて,このある罪の正犯というか,目的とする罪の予備罪自体を処罰することはこれでいい。あわせて,別に予備罪があるからといってその共謀罪,組織的共謀罪は処罰する必要はないというわけではないわけでして,やはりそれの組織的共謀罪は別途に犯罪として成立するのではないかというふうに考えます。予備罪は成立するけれども,しかし別に共謀罪としてまた別途あるので,何も予備罪の共謀罪とやる必要はない場合があるので,そうすると予備罪と共謀罪が罪質関係等どうなるかというのは別に議論される余地はあるとしても,予備罪があるから共謀罪は成立する余地がないということにもならないのではないかというような感じも,これはまだそれほど詰めたわけではありませんが,そんなことも考えると,なおさら予備罪それ自体の共謀罪というのはいかがなものかなという感じを持っているということでございます。 ● 予備罪を,現行法で特に予備罪として類型処罰しておりますけれども,それ自体として危険性等もあり,看過できないということで犯罪にしている面もあると思われるわけでございますので,その意味で先ほどの共謀の共謀が共謀かというのとはちょっと意味合いが違うのかなとは思っております。  それともう一つは,確かに日本の場合の予備と未遂の差でございますが,これは先進国でいいましても日本はかなり制限的と申しますか,外国であれば実行の着手に当たるものを予備という理解でこれまで来ているようにも思われるわけでございまして,その辺の実質論から申しましても,ちょっと他人予備という類型を外すことについてはいかがかなということで,予備罪,他人予備の共謀というものは,ここに当たる限り当たるという理解でお諮りしているということでございます。 ● 今の関連で,教唆・幇助,これ第一の一を見ますと遂行と,実行と区別されて「遂行」という言葉が使われているのですが,これは教唆・幇助も含むという趣旨でしょうか。 ● ただいまの御質問でございますけれども,罪に当たる行為の遂行ということは,基本的には構成要件該当行為を行うことという理解でございます。 ● 実行に着手する前にというような形で,実行と区別されているように思われるのですが。 ● ここで共謀ということで考えました場合に,まず「実行する」という言葉が出ておる理由でございますけれども,これは極めて技術的な問題でございまして,現在の組対法でこの表現を用いておられますので,このように使っておるということでございますが,それでなおかつ「遂行」ということを言っておりますのは,やはり共謀から我が国の場合厳格な意味におきます実行の着手ということをとらえてまいりますと,その過程と申しますか,共謀がございまして現実の実行の着手,そして既遂に至るまでには一連の流れがございますので,そういった共謀から目的といたしました構成要件に該当する,それ自体として犯罪とされる行為に向かってこれを実現していくということを,「遂行」という言葉で表現したということでございます。 ● いろいろ考えてみると,団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるという,こういうことを,殺人をしようという団体といいますか組織があって,それを幇助しようという組織があって,という場合は,その幇助を共謀することは可能ですか。それとも,幇助犯とかそういうものはここに入らないのだと,1又は2に掲げる罪に当たる行為でという,正犯のみがこの「当たる行為」ということになって,正犯以外の者,加功するということは考えていないのだということでよろしいのですか。 ● その点につきましても種々御議論いただくべき事柄かなと,含ましめるかどうか。ただ,少なくとも例えば独立幇助ということで,そういう罪があるといたしますならば,先ほどの他人予備と同じような問題でございますけれども,それは当たり得ることであろうと。基本的に考えておりますのが,共謀内容自体が犯罪として構成要件に該当して処罰されると,そしてその法定刑をここで2種類に分けておるということでございまして,今,○○委員御指摘の幇助行為,教唆行為を行うことを共謀すると,教唆なり幇助はそれ自体としては独立して処罰とされていない場合について,ここの共謀罪に取り込むかどうかというのは一つの検討していただく論点であろうと思っております。 ● 進行上の件でお伺いしますが,もう既に骨子の中身に入っておるようでございますので,中身に即して議論していいということでよろしいのでしょうか。 ● はい,そうですね。 ● では,その件で御質問させてください。  共謀に関しまして,先ほど御質問があったわけですが,この条約の5条の1の(a)の(@)は,「一又は二以上の者と合意すること」を要求しています。これは共謀に当たるという御趣旨でございますが,私は,それでいいと考えております。ここでただし書がございますね。このただし書との関連で,今回の骨子に対してどういう御配慮をされたかについて御説明いただけたら有り難いと思います。 ● 今,○○委員の御指摘は,ただし書の中に当該合意を促進する行為を伴うというものと,組織的な犯罪集団が関与するものという二つの要件があって,それが今回の要綱(骨子)にどのような検討を経て出てきているかということだろうと思うわけですが,このただし書の後段の組織的な犯罪集団の関与につきましては,それを組織的犯罪処罰法の枠組みを借用いたしまして,それを用いた共謀罪の成立範囲の確定という方法で今回の要綱(骨子)を作っておるということは,前回御説明申し上げたとおりでございます。  では,前段の当該合意を促進する行為の要件はどのような検討を経たのかということについて御説明申し上げますと,条約は原則としてはこれは重大な犯罪についての合意だけで犯罪を成立するということにしながら,その後段で一定の行為を要件とすることができるとしたわけでございますけれども,これは端的に言いますとアメリカなどの国におきましてはコンスピラシーの罪に合意に加えた要件として,いわゆるオーバート・アクトと言っておる何らかの行為,外的な行為とか言われますけれども,そのような行為を要件としている国がある,そのような国に配慮したために選択的に要件にすることができるという,このような規定が付けられたものでございます。  アメリカのオーバート・アクトというものはどのようなものかといいますと,これはお配りいたしました外国法制の資料の中にもございますが,アメリカ合衆国の共謀罪,371条というところでございまして,アメリカの共謀罪の構成要件は二人又はそれ以上の者が一定の犯罪を共謀すること,かつ,そのうちの一以上の者が「共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき」という要件がついていまして,これがオーバート・アクトと言われているものでございます。  ただ,このオーバート・アクトというものは,共謀罪には必ず付いて回るものかというと,必ずしもそういうものではございません。同じコンスピラシーの罪を持っておるイギリスでは,制定法上の共謀罪でもオーバート・アクトは付いておりませんし,コモン・ロー上の共謀罪でもオーバート・アクトは不要だと解されておるところでございます。  また,アメリカにおきましても,今の外国法の資料の(注2)のところにいろいろな共謀罪の特則があると書いてございますが,この中の例えばRICO法の共謀罪,組織犯に関するものですが,その共謀罪でありますとか,薬物犯罪に関する共謀罪につきましては,このオーバート・アクトはつけられていない。つまり,そのように共謀罪には必ず付いて回る要件ではないということがございます。  では,そのオーバート・アクトはどのようなものと位置付けられているかということになります,これは非常にわずかな行為でも足りると,それ自体は違法な行為でもなくてもよいし,しかし逆に,実行行為でもあってもよいという,非常に幅広いものとして理解されております。アメリカにおきまして,このような要件が付いております。  これを我が国で必要とするかということについて考えますと,共謀だけで犯罪を成立させるということにつきまして,こういうオーバート・アクト,その共謀に基づいた何らかの行為を要求いたしますと,成立が他の共謀以外の事情によって確認できるという意味で明確になるということはそのとおりでございますが,それはある意味で共謀の存在を立証するための法定証拠みたいな位置付けになってしまうのではないかなと考えまして,そういう意味でオーバート・アクトの要件を入れるということになりますと,なかなか我が国の法制にはそぐわないのだろうと,自由心証主義の中で十分な立証を行うことによってそこは確保していくということが我が国のやり方なのだろうというのが,この要件を要綱(骨子)で採用しなかった理由の一点目でございます。  そのほか,我が国の現行法上,共謀罪,陰謀罪,かなりの数規定がございますが,いずれもこのようなオーバート・アクトの要件を入れたものはございません。それらの犯罪との整合性がどのようになるのかということがございます。  そして,一つ特に問題になり得るかなというのは,立証上の問題の意義が大きいということにいたしますと,共謀自体は証拠上非常に明白であると,例えばたった今し方までやくざ者の大幹部が共謀しておりまして,あと3時間後に相手の組に突入しようと共謀を遂げた直後に,一人の者が警察に通報してきたとしましょう。そういたしますと,共謀の立証はその者の供述で完璧にできますけれども,外的行為は何もない,そういう事態が生ずるわけでありまして,そのようなある種極端な例かもしれませんが,そのような場合にはオーバート・アクトはちょっと余計な要件だという位置付けになってしまうのではないかなと思っておるところでございます。大体そんなようなことを考慮いたしまして,この要綱(骨子)では外的な行為の要件ではなくて,組織的な犯罪集団の関与の要件を採用しておるということでございます。  また,組織的な犯罪集団の関与の要件を採用した結果,団体の活動として当該行為を実行するための組織により実行するということの共謀が遂げられるということは,相当具体的な犯罪計画ができておるということと表裏でございます。したがいまして,それが立証できるということは証拠上の合意の存在が確実に認められる場合であるということで,濫用防止といいますか,そういう観点からも十分な歯止めになっているだろうと思っております。  話があちこち飛びましたけれども,大体そんなようなことをもろもろ考慮いたしまして,現在の要綱(骨子)になっておるということです。 ● 今の御説明との関連で,一点確認したいことがあります。  今の御説明ですと,オーバート・アクトを要件とすることは余り適当ではないのだという印象を受けましたが,こちらの方で処罰の範囲を限定することも,選択の一つではあり得ると思われます。  問題は,オーバート・アクトの要件で縛るか,組織性の要件で限定するかですが,どちらかを選択しなければならない場合には,組織性で限定する方が妥当だと私は考えます。ところで,条約の読み方ですが,TOC条約5条1(a)(i)のただし書の二つの要件は「又は」で結ばれており,英文も「or」という文言になっています。これは両方の限定を加えた立法をした場合には,TOC条約5条の要請にかなっていないということになるのでしょうか。 ● まず一点,質問の前段の方に関して先ほどの答えを補足いたしますと,オーバート・アクトの要件は,我が国に持ち込むのが適当ではないと聞こえたといたしますと,私の説明がうまくなかったのでございまして,要綱(骨子)のように組織的犯罪の関与の要件を入れた以上は屋上屋を重ねるというようなことになるだろうという趣旨でございまして,もし仮に一般的に共謀の罪を作るとかいうことになれば,これはまた十分に検討の必要がある事柄だろうと,外的な行為のいろいろな意味での意義というものは,決して否定しているわけではございません。  それから,質問の後段の方の二つの要件を両方付けることができると読めるのかということでございますが,この点につきましてはそれぞれの要件の趣旨が異なりますので,一方をとると他方が排斥されるという関係にはないと,そういう意味では論理的には両方付けることはできるとは考えます。ただ,この条約の基本的な趣旨というものが共謀罪の実行着手前の適切な犯罪化,実行着手前の共謀を広く処罰可能にするということにあるということから考えますと,片や組織的な犯罪集団の関与の要件を更にオーバート・アクトでより限定していくということになりますと,これは条約の本来求めている趣旨からいって適当かというと,必ずしも適当ではないだろうとは思います。  解釈としては,両方をとったら条約違反になるかといったら,必ずしもならないのではないかとは考えておりますが,それは条約が好ましいものとして考えているかといったら,きっと違うのじゃないかなと思っております。 ● 確かに,文理的にはこれで明々白々条約違反ということにはならないわけでございますけれども,ただ両方を日本の場合に法制的にかぶせなければいけないのかということになりますと,先ほど来御説明いたしておりますように,そもそも日本で既存の共謀罪にオーバート・アクトはもとより要求されておりませんし,日本の法制でオーバート・アクトという概念もございません。  また,先ほど御説明申し上げましたように,そもそものオーバート・アクトを付加することも許すというのは,アメリカのような法制の国が加入する際の敷居を低くすると申しますか,その観点からなされたものでございまして,実際アメリカにおきましても,一部の罪について確かにオーバート・アクトはございますけれども,相当程度組織犯性と申しますか,RICO法などの共謀罪,あるいは薬物犯罪等についてはオーバート・アクトはもちろん要求されていないという状況でございまして,そういった横並びの問題等も考えますと,あるいは日本の国内法上オーバート・アクトというのは基本原則なのかというと,それも決してそうではないということでもございますので,そういったことを考えますと,やはり条約の義務を適切に履行すると申しますか,そういった観点からはこのような組織性という形で対応するのがふさわしいのではないかと考えたということでございます。 ● 今の点と関連しまして,組織性ということで縛りをかけるということの意味として,○○幹事の方から相当具体的な危険の必要性があるという御説明があったというふうに記憶しておりますが,通常,共謀するという場合には,これから先のことを共謀するということですから,団体の活動として組織による犯罪をこれから共謀するという場合には,これから組織を作って団体として犯罪をしようという共謀も私はあり得ると考えるわけですが,しかし事実上,○○幹事の御説明は,そういう共謀は採らない,既に既存の犯罪集団あるいは組織集団というものがあって,その中でこれらの犯罪の共謀をした場合に本条の適用を限るのだと,そういうものとして本条を理解すると,そういう限定解釈をとるというふうに理解してよろしいのでしょうか。 ● 既存の団体がある場合に限ると申し上げたつもりはございません。観念的には,もちろんこれから団体を作って,その活動として実行チームを編成して行っていくということの共謀もあり得るだろうとは思いますが,共謀罪の成立につきましては,当該具体的な犯罪の遂行の共謀でございます。したがいまして,合意に係る行為,犯罪に当たる行為がどのような内容かにもよりますが,それを実行に至るまでのいろいろな手順とかいろいろな役割とか,計画を実現するために必要ないろいろな要素というものがあると思うのですが,そういうものを総合考慮した上で,その共謀に係る犯罪が実行されることの具体性とか特定性とか現実性というものが要求されてくるだろうと思うわけであります。そういたしますと,これから団体を作ってやっていくということが当たるかどうかは,もう事実認定の問題に解消されてしまって,否定はしませんけれども,具体的にどの程度そういうことが起こり得るかというと,余り多くはないのだろうなという率直な感じは持っております。 ● いまひとつ納得できない御説明だったという気もするのですが,要するに組織的な形態で犯罪が行われることの共謀であるから,その組織的な形態で行われる具体的な危険性が必要であると,その危険性の解釈論,あるいは事実認定論であって,必ずしも既存の集団の存在を前提とするものではないというお答えだったと思いますけれども,しかしそれは,事実上は既存の集団がなければ,そういうものが,例えば国際的に日本の二,三人の集団と外国の集団とが一緒になってやろうというような共謀をやったというような場合に,日本の集団としては三人しかいないけれども,これから手を組む相手の方は大きな集団であるというような場合には,これは具体的危険性がある。しかし,そこと話をつけようというような共謀をするということは入ってこないという,そういうことですね。 ● 正にその事実認定の問題でありまして,例えばそういう団体と話をつける実力が全然ないような,例えば私が共謀しても,これは駄目でしょうということです。 ● 今のに直接当たるのかどうか分かりませんが,組織的な詐欺といいますか,そういうものをやることを考えて,会社を作ろうと,会社的な法人なんかを作ってやろうという者たちが集まって,こういうふうに団体を作って,その中のこういう組織にこういうことをやらせようということを話し合ったら共謀罪ですよね。まだ団体ができていなくても。 ● 団体が完成していなくても共謀罪が成立することはもちろんあると思いますが,そういう団体を作って実行させるだけの具体性といいますか,現実性を持った共謀になっておるかどうかという事実認定の問題だろうと考えておるわけです。  要するに,私が−−私ばかり例に出してはいけませんけれども,本当の下っ端のチンピラが,やくざの大親分を動かすといったところで,しょせん現実性のないたわ言だということは幾らもあろうと思うわけです。 ● オーバート・アクトについてですけれども,私の印象は,アメリカの場合は共謀罪は刑は軽いということがありますけれども,他方で推定規定が相当設けられておりますし,それから証明責任も軽いということがありますので,オーバート・アクトが必要だという,そういう要請があるのだろうと思うのですね。日本の場合は,証明責任は別に軽くするというわけではありませんし,それから実際上事実認定の場合にはアメリカの場合でも○○幹事が法定証拠として使われているというふうに言われましたけれども,証拠として使われているということで,日本の場合にも実際にはオーバート・アクトのようなものがなければ,やはり共謀罪というものを認定するのは難しいのではないかなと思いますので,そういう意味では全体としてはバランスがとれているかなと。組織によって,組織性で対応するということによってバランスがとれているかなと,そんな感じがいたします。 ● 余り本筋には関係ないのかもしれないのですが,こういう形の規定になった場合に,共謀罪,つまり複数の罪の実行を共謀した場合に,共謀罪の罪数としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。 ● 共謀罪の罪数の詳細のところを考えていくとかなり頭が痛くなるということはございますが,骨組みのところだけ御説明させていただきたいと思います。  共謀罪というのはどのような犯罪だろうかと考えると,これは合意に係る行為が構成する犯罪と,仮に本犯と言わせていただきますが,本犯が実行されると法益侵害が出るわけですね,要するに,本犯が実行されるその危険を発生させる犯罪だと,共謀罪というのはそのような性質の犯罪として理解していいのではないかと思うわけです。したがって,法益侵害を罪数の一つの基準として考える以上は,共謀の対象となった本犯の数だけ共謀が成立するのがまず大原則であろうということがあります。  それを前提にするのですが,しかし共謀というのは一つの機会に多数の犯行を同時に並行的に共謀することも,容易にできるのですね。では,それを一罪と解するか数罪と解するかというのはなかなか困難な問題でありますが,考慮すべきこととして,恐らく三つぐらいあると思います。  その一つは,まず共謀段階でとどまったときにどういう罪数処理があるべきかと。次は,一まとまりに複数一緒に行われた共謀のうちの一部が実行されたときに,残りの共謀がどうなるかということと,全部実行されたときに相互の関係がどうなるか,その三段階を考えなければいけないのだろうと思うわけでございます。  話を単純化するために,A,B,C三人を殺そうという共謀をしたという,極めて単純な事例で考えたいと思います。三人を順次,例えば日本刀でバッサバッサと切って進めば,これは併合罪になりますね。既遂の犯罪は。そういたしますと,その場合共謀は一つである,しかし行われた犯罪が三つあるという場合に,その共謀をかすがいにして殺人の三つが一つになってしまうというのはおかしいだろう,やはりそれは殺人の三つは併合罪になるべきだろうと。既遂犯は三つになるだろうと,併合罪になるだろうと考えられます。  一番問題なのは,中間形態で,一部の犯罪が実行された場合でございます。Aに対する殺人だけが実行されて,一緒に共謀されたB,Cに対する殺人は共謀のままで残っておるという場合でございますが,このときAに対する殺人既遂,本犯の審理において,B,Cに対する法益侵害の危険を発生させたことは評価し尽くせないだろうと考えるわけです。そういたしますと,Aに対する殺人の共謀はAに対する本犯の中で十分に評価できますので,別途処罰する必要はない。それは吸収されるという表現になるかどうかは別にして,別途犯罪を立たせる必要がない。それに対して,B,Cに対する殺人の共謀は,Aに対する殺人,本犯とは別罪として残しておくべきであって,それは別訴を許さないとその法益侵害が十分に訴追できないことになるだろうと考えるところでございます。  最後は,いずれも共謀にとどまっている段階でございますが,これは共謀を非常に理論的に,三つの共謀が順次行われたと分解して考える考え方もあろうかと思いますが,そこまで無理してばらさなくても,1回の機会に行われた共謀なんだから,一まとめで一罪だという解釈も十分あろうと思います。ただ,そこで一罪だとしたために,そのうちAに対する殺害だけが実行されたときに,B,Cに対する共謀がそれに一緒に吸収されてしまうという結論になるのは適当ではないと考えておりまして,そういう意味でいけば,例えばA,B,Cに対する殺害を1回の機会に共謀したとしたら,それはいわば包括一罪的に解するにしても,とても緩やかな結合の包括一罪みたいに解さないと,三つまとめてAに対する殺人本犯のところに吸収されてしまうということになってしまい,適当でないだろうということを考えております。今はそんなふうな考えでおります。 ● 今の罪数に関する御議論は,実体法の見地からはそのとおりなのだろうと思うのですが,ちょっと訴訟法の立場から言いますと,実行行為,罪となるべき行為は1個の共謀行為だろうと思いますので,それがこのA,B,C三つに分かれてくるということは,少し問題がありはしないかと。もちろん,Aの殺人,Bの殺人というふうになってくれば,それもそれぞれ別になるわけでしょうが,共謀罪の段階にとどまる限りは,それが1個か複数かということについては,少し検討を要する問題ではないかという気がいたします。 ● 今の件ですが,この罪数問題というのは前回共謀共同正犯になったら吸収されるというお話をいただいたような気がしていて,それが少し私も疑問で,今度の共謀罪というのは本犯に吸収されるというふうにお考えのように思っているのですが。  例えば,ある組織の人間をやっつけようという共謀をしたときに,それを一人一人何回か殺された人が出たとかいう場合ですね,これは共謀共同正犯−−共謀は一つですね,共謀しか参加していない人,実行行為をしていない人にとっては多数の共謀共同正犯になると,そういうことになるのですか。  これ,もともと共謀というのを一つにして,共謀罪という独立した犯罪というふうに考えればある意味で解決がつく−−と言うと変ですけれども,それを本犯に全部従属させてしまうと違うのではないかと。だから,共謀というのを一つの法益侵害の犯罪として考えていくという方が,独立にして考える方がいいのではないか。いいという意味は,考えやすいのではないかと思っているのですが。 ● 講学上,「吸収」という言葉を使っておられるわけでございますけれども,ただその意味するところと申しますか,私どもとして理解しますのは,突き詰めてまいりますと最終的な目標とされた犯罪において処罰されるということであれば,それとは別に,前の行為を処罰するという必要はない,それはしないのだということを吸収という形で表現されておられるのかなというふうに理解するわけでございます。その意味で,先ほど○○関係官がおっしゃったのも,1個の行為性というものが,その後の罪数評価となり手続的にどう反映してくるかという問題であろうかとも思われますけれども,この辺は共謀罪ということで考えますのが先ほど申し上げましたように最終的にそこで計画された内容,その保護法益に対する危険性ということでございまして,法益侵害の危険性ということが根底にあるわけでございますので,そういったことから見ますと,最終的に既遂になれば,それは既遂になった段階での,あるいは実行に着手でもよろしいのですが,その段階での犯罪の罪数ということで考えざるを得ないのであろうと。  似たようなことは,全くパラレルというわけではございませんが,例えば,1丁の拳銃を準備いたしまして,時,場所を変えて何人かを殺害した,予備行為として正に1個の拳銃の準備ではございますけれども,それはそれぞれにおいて最終的なところでは併合罪で処理されるわけでございます。これは予備の関係でございますけれども。  似たような話は,共謀ということで,予備とは別に,それぞれの人間が,この共謀として構成された一つの機会に行われた犯罪を分担して遂行していくということであれば,例えば物的なものと引き直して予備罪に似たような御説明をいたしますとしますと,何丁かの拳銃を皆で集めてまいりまして,それぞれこの拳銃で甲はAを殺害に行く,乙は二つ目の拳銃でBを殺害に行く,丙はCをということで分かれていきましたときに,すべてがそれで評価され尽くされることになるのだろうかと。つまり,その結果として共謀としては例えば1個という評価ができるような場合でございましても,保護法益として殺人が甲,乙,丙に対して行われれば,当然併合罪でございましょうし,例えば甲と乙について殺害が行われて,丙については着手に至らなかった場合の評価,これはもう評価され尽くしていると言うのかということでございますので,現行法でも似たようなことは生じているのではないかと理解しております。 ● 非常に単純に,今の○○委員の例で,例えば一つの拳銃を用意して,A,B,C,時と所を変えて三人殺そうと思ったと。そして,Aを殺した段階で捕まって,Aに対する殺人罪で処罰されるというときには,予備罪は吸収されるといいますけれども,同時にBに対する危険性もあった,Cに対する危険性もあったのだから,Bに対する予備罪,Cに対する予備罪を更に処罰できると考える見解というのは,どうなのでしょうか。今は,そうは考えられていないのではないのでしょうか。更に再訴できると。 ● それは,その予備行為の1個性というところから,一つとしての評価をするということで,当該予備行為が甲,乙,丙の殺害の予備行為だという部分,それをどう評価するかという問題ではなかろうかと思います。ですから,完全なパラレルではないということで申し上げているのは,その辺また違った意味があるのじゃないかと。 ● ○○幹事のおっしゃる方が筋としては通っていると思いますが,恐らく1丁の拳銃を用意してAを殺したときはAの殺人既遂に予備が吸収されると。次に,なおBの殺害を企てていれば,その段階でBに対する殺人予備が成立するというふうに考えれば,一応の解決になるのではないかという気がいたしますけれども。ですから,それ以前についてはBに対する殺人予備はまだ成立していないというふうに考えるしか,○○委員の解釈を善意に解釈すると,そうならざるを得ないのではないか。  しかし,いずれにしても先ほど○○委員も御指摘になられたところですが,観念的競合にするのか,それとも包括一罪にするのか,それとも個別の危険性ということでそれぞれに予備の,あるいは共謀の成立を個別に考えていくのかということは,かすがい現象との関連もあって,ここでそこまで議論する必要があるかということは多大に疑問でございますけれども,なお詰めなければならない問題点であることは間違いないだろうと思います。  ついでに,先ほど○○委員が御指摘になった遂行を共謀したという部分,私の理解では,これは必要的共犯の中の集団犯に属する共謀罪というものが,そういう性質の犯罪だろうというふうに理解しております。通常,集団犯の場合ですと,役割に応じて首魁とか−−首魁は古いですね,首謀者とか,そういう役割に応じて刑罰の軽重というのがつけられているわけですけれども,この要綱では「死刑・無期若しくは」という罪種によって,あるいは法定刑によって予備・共謀罪の法定刑が違っているだけでございますから,結局遂行の共謀ということは,共犯の最低の成立要件でありますところの意思の疎通,要するにこれを共謀と呼ぶといたしますと,共謀があればこれは全員同じ法定刑で処罰できる。そういう意味では,これは一種の共謀罪の共謀共同正犯,実行共同正犯含めて同一の法定刑で処罰する,したがってその中には,幇助的な行為もございますでしょうし,教唆的な行為もあるというふうに存じます。したがいまして,それは時間の経過によって,目的とされた犯罪が実現されていけば,それはそれでまた共謀罪とは別途これは実行された犯罪については教唆犯であるとか,実行された犯罪については幇助犯であるということは,これは当然あり得ることだというふうに理解しております。  ただ,その場合に問題となりますのは,実行に至った場合に共謀罪としては共同正犯であるのだけれども,役割の上からいうと幇助犯に落ちる,実行された犯罪については幇助犯に落ちるという場合があり得るということですね。その場合に,幇助犯の刑は,結局必要的に減軽されることになって,場合によっては第一の一の2の「三年以下の懲役又は禁錮」より軽くなる場合が出てくるのではないか。ちょっとこれも細かい議論ですが。 ● それは,ここの共謀罪における正犯者たり得るかと。 ● 共謀罪については正犯であると,しかしながら現実に犯罪が実行された段階では,その役割からいって実行された犯罪の幇助犯に落ちると。 ● したがいまして,申し上げておりますのは,ここは基本が共謀共同正犯の共謀ということを念頭に置いておりまして,そうなりますと確かにその行為だけ見れば,例えば現場まで運転していく,そして犯行が終われば逃げてくるときの運転行為的なものもございましょうし,いろいろと役割分担があるわけでございまして,直接の殺害行為に関与しなくても,そこは全体として共謀共同正犯と言えるような関与形態であれば,といいますか,それが計画されておるものであればよろしいということになろうかと思われますが。 ● ですから,この共謀罪における共謀者というのは,全部共謀共同正犯ないし実行共同正犯として処罰される,これはおっしゃるとおりだろうと思うのですね。それでも,この段階で共謀に関与しているけれども,大した役割をしていない,ただ連絡係をしているだけだというので,共謀罪の幇助犯に落とすということがあり得るのか,それはないだろうと。あり得るのだとすれば,それはそれでここに言う共謀というのは主たる役割を果たすものだけであって,これらが実行に移ったときに幇助に落ちることはないのだと,そういう前提ならそれはそれで結構でございます。 ● 私どもが考えていたのは,共謀した者がその共謀のとおり犯罪が行われれば共謀共同正犯になるものだけを考えておると。したがいまして,この共謀罪についての幇助というかかわりはあり得るというふうに考えております。例えば,場所を貸すとか,いろいろそういうことはあり得るだろうと考えておったわけです。 ● 教唆というのもあり得るわけですか。 ● 理論的に排除されるかどうか分かりませんが,実例の想定は難しいのですけれども。 ● 遂行という観念ですけれども,私は広く調べたわけではありませんけれども,やはり実行と遂行は少し違うのではないかという気がいたします。「遂」という字は遂げるという意味なので,やはり遂行というのは初めから終わりまでやってのけるというニュアンスを含んでいるのではないか。実定法の用例ですと,大体「遂行」という言葉が使ってあるのは,確かに集団犯の場合でありますが,同時にそれは,共謀し,唆す,あおるというようなことと常に一緒になって出てきているので,初めから終わりまでをやってのけるというニュアンスを含んでいるのではないかという気がします。  実行の方は,やはり実行の着手が一番問題になるわけですが,要するに犯罪行為に手を着ける,もちろん行為最後まで実行の問題ではありますけれども,むしろイニシエーションといいますか,初めのところが重要である,これに対して遂行の方は,犯罪の終了までが視野に入っているのではないかと。そういう意味で,先ほど予備の遂行というお話も出ましたけれども,それはちょっと外れるのじゃないかなという感じがいたします。 ● 今,○○委員の方から刑のお話が出たので,先回も法定刑に禁錮が入っているのはどうだという些末な質問をしました。要するに,殺人の共謀をして禁錮というのはおかしいのではないかということだったのですが,それについてはお答えいただいて納得したのですけれども,逆に重くなる場合もあるのではないかと。例えば,要綱(骨子)の第一の一の2号の方で,「長期四年以上の有期の懲役又は禁錮の刑が定められている罪」,この中には当然選択刑として財産刑がついているものもあるということになると,前段階の共謀については財産刑が一切予定されていない,要するにより進んだ犯罪よりも前の方の方がかなり重くなっているというのはちょっと違和感が出てくるのじゃないかということです。 ● 例えば罰金がついている10年以下の懲役又は30万円以下の罰金を共謀すると,共謀罪の方に罰金がなくなるということはどういうことかという御質問だろうと理解いたしますが,これは本犯の方は,要するに団体の活動,ここに言う組織的犯罪の関与の要件,これがついていない場合でございますので,そういう非常に軽い罰金とかそういう事態も想定して刑が定められていたと思うわけですけれども,それを組織的な態様で遂行しようという共謀をしたという,非常に違法性の高い場合だけに限定いたしました関係で,仮にこの組織的態様で本犯が実行されれば,そこで罰金が選択されるということはまずないだろうと理解しておりまして,それとの関係で共謀もパラレルで罰金はここは設けていない,そういう案を提示させていただいておるということでございます。 ● 処罰範囲のことで一つだけ申し上げたいのですが。  条約の国内法整備を図るという意味では,こういう第一の一の1,2という形に落ち着くのは賛成ですが,社会的実態で申し上げますと,昨今むしろ組織犯罪といいますか,暴力団あるいは不法勢力による活動の中には,公共工事への介入でありますとか,あるいはヤミ金融に深くかかわるとか,こういう実態が見受けられます。そうしますと,例えば公共工事等の強制執行妨害であるとか競売妨害でありますとか,これは法定刑がこの中に入らない。それから,ヤミ金融の問題につきましては,貸金業法でありますとか,あるいは出資法違反等で−−犯罪収益を隠匿すれば組対法でいきますけれども,そこまでいかないような形の実態での関与の場合には,これもやはり法定刑がこの中に入ってこないという実情があります。そういう意味で言いますと,条約の受け皿を作るという意味では結構かと思うのですけれども,この法制審議会の中で議論すべき課題かどうかちょっと分からないのですが,そういう社会実態に対する,不法勢力に対する対応として,実行行為まで進んでしまえばそれの共謀共同正犯ないし共犯という形,あるいは正犯という形で処罰するということになるのかもしれないのですが,その前段階でのいわば組織的に計画を立てたりする部分というのが対応できないというような問題があるのですけれども,この点についてはどんなように考えたらよろしいのでしょうか。 ● おっしゃいますように,国内的にも犯罪組織,それが様々な分野で違法,不当な行為を行っておる,もちろん犯罪行為を行っているという実情にあるのはそのとおりでございまして,今回,条約の義務にこたえるということを基本に立法動機としている関係で,このような規定振りをさせていただいておるところでございます。委員御指摘のように,日本の国内の実情ということを実際知れば知るほど,条約義務の限度でいいのかという御意見は当然あろうかと思われますが,その意味で今回の共謀罪として御提示させていただいているのは,その条約の義務ということを今回は考えさせていただいているということでございます。したがいまして,国内的に共謀罪というものを犯罪としてこれ以外の罪については規制する必要等が全くない実情であるとか,そういった認識に立つものではございません。 ● では,ここで休憩いたします。            (休     憩) ● それでは再開いたします。  引き続き第一の「組織的な犯罪の共謀」についてお話を伺い,ある程度のところで終わりましたならば次のテーマにという,フレキシブルなやり方をしたいと思います。  御発言ありますか。 ● 今日の会議の最初のところで,○○委員の方から,条約34条2項の解釈とこれに関する注釈書についてのお尋ねがございました。条約の条文でいいますと,3条の適用範囲の規定と,それから34条2項の規定の関係をどう読むかということでございますが,3条1項には,「この条約は,別段の定めがある場合を除くほか,次の犯罪であって,性質上国際的なものであり,かつ,組織的な犯罪集団が関与するものの防止,捜査及び訴追について適用する」という適用範囲の規定があるわけですが,この適用範囲をどういうふうに定めるかについては,この条約の審議過程でいろいろ議論があったところでございます。  国際組織犯罪条約ということでありますので,国際性,あるいは組織性といったものを適用範囲の外枠として定めるべきであるという議論が当然あったわけですが,他方で,必ずしもそれをすべての条項について一律にといいますか,厳格に適用していくと不都合が起きるのではないかという議論があったわけです。特に,犯罪化義務の関係では,確かにこの条約がターゲットにする国際組織犯罪というものは,国際性,組織性といったものを要素とするわけでありますけれども,そもそも国内法で犯罪を規定する場合に,国際性,組織性の要件を持ったものだけを対象にする,あるいは国際性のない国内的な組織犯罪については対象にしないという,そういう規定が作れるのかという議論もありました。さらに,国際組織犯罪集団は,国際的にいろいろ犯罪活動を行いますが,そういう集団が同時に国内でも犯罪活動を行う,そういう場合に,国際的な犯罪を行ったときだけ処罰して,国内的な犯罪活動を行った場合には処罰しない,それでは困るではないかという考えもあったわけです。  また,国際協力という場面でも,その国際性,組織性といった要件をどこまで厳格に適用するのかという議論がありました。特に捜査共助の場面でいいますと,その事案を解明する捜査の発展段階にあるわけですので,余りその要件を厳格に適用してしまうと,本来解明して初めて国際組織犯罪であったということが明らかになるのに,捜査共助ができないためにその解明ができないということでは,この条約の本来の趣旨にも反するではないかということで,その辺の要件をどういうふうに定めて,どういうふうに使っていくかという議論があったわけであります。そして最終的に落ち着いたのが,この3条と34条の規定ということになるわけです。  そこで考えられたのは,結局犯罪化義務については3条の一般的な規定にかかわらず,34条2項の定めによって,これらの犯罪については国内法において国際的な性質あるいは組織的な犯罪集団の関与とは関係なく定める,それらは要件としないで犯罪化をすべきであるという考え方になったということであります。それは,先ほど申し上げたように,犯罪化義務については,国際性や組織性を要件としないで犯罪化義務を定め,それを用いて国際組織犯罪に対抗するための国際協力をしていくというのが,条約の本来の趣旨にかなうだろうという考え方に立ったわけであります。  それで,御質問にありました注釈書の関係ですが,これは条約交渉の過程で出た議論を参考のために注釈書に記載して,説明をしたものです。その中に国際性,組織性の要件の要否に触れた表現もあるわけですが,この記載部分の全体を読んでいただければお分かりのとおり,その趣旨は,そういった二つの要素を犯罪化義務においては考慮すべきではない,3条に一般的な適用範囲の規定があるけれども,それとは別に,犯罪化義務においてはそういった二つの要素を考慮しないで定めるべきであるというのがこの注釈書の一つの趣旨であります。他方,犯罪化義務の規定とは別に,国際協力,犯罪人の引渡しや捜査共助の分野については,そういった国際性あるいは組織性の要素を考慮するものであり,その点には影響を与えないということが注釈書の中で説明されているということでございます。したがいまして,前回御説明いたしましたように,この条約においては犯罪化義務について3条1項の規定とは別に,34条2項の規定に従って国際性あるいは組織性といったものを要件としないで,犯罪化をすべきであるという義務がかかっているという理解でございます。 ● TOC条約が犯罪化を具体的にどの範囲で要求しているかということについて,重ねて伺いたいのですが。  先ほど,質問したことと関連するのですが,5条1(a)(@)のただし書の部分を素直に読んだときに,この二つが「又は」で結ばれているので,両方によって限定した場合には条約の要求を満たさないのではないかと考えていたのですが,先程の御回答ですと,両方の要件によって縛りをかけても条約の要求を満たさないことにはならないとのことでした。  そこでこれを前提として伺うのですが,前段のところは,今,御説明がありましたように,確かにこれはオーバート・アクトのことを指していると,条約審議の過程でもそういう形で出てきたと思うのですけれども,そのことを離れてこの条文を素直に読んだときに,ここの「 an act undertaken by one of the participants in furtherance of the agreement 」というのは,その経緯は別にして,これは予備も含み得るのですか。あくまで条約の解釈として,予備も含み得るのだという解釈をすることができるのでしょうか。 ● 我が国の予備罪,予備というものが国際的に見てどの程度共通の価値観があるのか,未遂の成立範囲も国によってかなりいろいろあるという中で,我が国の予備でいいのかどうかというのはなかなか慎重に検討していかなければいけない問題だろうと思っているところでございますが,合意を促進する行為の要件を採るか採らないかということにつきましては,当初の案としてはこれは私どもは組織的な犯罪集団の関与の要件をとる以上は,それに重ねてその要件をつけることは適当ではないと考えておる,そういうことで今回はそこは出していないということでございます。 ● この点は,今も○○幹事の方から若干触れるところがございましたが,予備の概念というのが恐らく国によって広い,狭い,様々あるのだろうというふうに考えるところでありまして,日本で言う予備がここに記載されている行為として十分かどうかというのは,相当慎重に検討しないといけないだろうというふうに思われます。  もともとは,経緯から見ますと,英米法で言っているオーバート・アクトを想定してこのような規定が置かれているわけでありまして,私どもの理解しているところでは,英米法のオーバート・アクトというのはかなり広い概念といいますか,広い行為を含むものではないかと理解しているところですので,それを前提にすると,この条約の規定も,相当広いものということにはなるのだろうと思いますが,条約の解釈として,ここに書いてある行為と日本の刑事法でいう予備というものの差異を比較するというのは,更に慎重に検討しないといけないのではないかというのが現在のところでございます。 ● 国内立法のさいに,この文言を予備を含むと読んで立法しても,5条の要求を満たすと解釈してよいのですか。 ● ですから,日本における予備行為というものと比較すると,ここで規定しているアクトというのが,もっと広い行為まで含むものではないかというところについては,検討が必要だという意味であります。 ● このような立法が妥当かどうかは別にして,例えば共謀の結果,その一人が予備行為に及んだということを要件にして立法した場合,5条の要求に反していると言えるのでしょうか。 ● それは,刑法等に書いております予備行為というものはどういう場合に予備に当たるかということにもなろうかと思われますが,制限的な解釈を前提として考えますと,それを要件とした場合には,ここで申しますオーバート・アクトに相当する要件を満たさないおそれがないかどうか検討を要すると考えておりますが。 ● 先ほどの問題に戻りますが,よろしいですか。先ほど○○委員から出た論点ですが,これは確認です。  犯罪組織を作ってから一定の行為を行う場合をも骨子案は含み得るという御説明がありましたが,これは当罰性の問題として,そういう場合をも処罰すべきだという御意向なのでしょうか。その点だけ教えていただければと思います。 ● 処罰すべきか否かはお答えが難しいのですけれども,仮にこれから団体を作る場合であっても,要するに団体が確実にすぐできて,すぐ犯罪実行に行くことが明白なような,要するに危険性が非常に高いケースであれば,それは否定されるべきではないだろうとは思いますが,事実認定の問題に入りますので,なかなかきれいなお答えができません。 ● 少し気になりましたのは,今の場合は実質的には結社に近くなることです。そういう場合をも含み得るということであるとすれば,結社の場合は排除すべきという見地からは,規定振りの段階でもう少しここのところを文言上考慮することもあり得るのではないかという趣旨で伺った次第です。 ● この要件の中の,「団体の活動として」というところの団体の要件自体で,ある程度の継続性のあるものというのが既に組織犯処罰法の中で定義されておりますので,そういう意味で,これから作る場合はやはりある程度はおのずと限定されてくる,通常の共犯的なものは外れてきますし,一定の制約はかかってくるのかなと思っております。 ● ○○委員,何か休憩前に御発言をリクエストされたのじゃなかったでしたか。 ● これは,軽犯罪法では傷害の共謀は拘留又は科料ですよね。今回,団体としてというふうな要件はかぶるにしても,共謀という段階があれば3年以下の懲役又は禁錮,こういうふうになる。だから,まだ見てはいないのですが一つ一つの犯罪と刑の関係の均衡性というか,この規定振りだと第一の一の1,2というのは,それぞれ大きく二つに分けて一くくりにしている規定振りですけれども,見ていくとそういう規定振りでいいのかなという感じがしてくるのですが,その辺はどういう検討をして……。  というのは,なぜそういうことを言うかというと,条約の中での長期4年以上というのは,各国のいろいろな法制度を,どこまで具体化したか分からないのですが,とにかく長期4年というふうになったと思うので,日本代表といいますか,法務省も加わっている日本代表などは,日本の刑法の構成要件,規定振りは必ずしも細かく,例えば傷害でも幾つかに分ける,窃盗でも分ける,殺人でも分けるということをしていない。そういう規定振りの日本の刑法で,長期4年というふうになるとほとんどの犯罪が対象になりかねない。そういう意味では問題があるのだというふうな意見を述べていたというふうにも聞いているものですから,そういうときにそのまますぽっと持ってきて,それに対する共謀は3年以下と,こういうふうに規定するというやり方がいいかどうかということをちょっとお聞きしたかったのです。 ● アド・ホック委員会等の交渉で,正確にそういう趣旨の発言であったかどうか,私,ちょっと記憶に今ございませんので,その点はおくといたしまして,他方,ここで言っておりますような長期4年以上のものというのは,国際的にこういった共謀罪なり結社罪を作って規制しなければならない重大な犯罪だという認識がコンセンサスとなったわけでございまして,そういった義務を果たすという観点からまいりますと,なるほど現行法で申しますと軽犯罪法には委員御指摘のような規定はございますが,では他方で条約上の義務を果たすという観点からまいりましたときに,拘留・科料という,いわば逮捕そのものも制限がかかるような,あるいは様々な手続的にも制約があるような法定刑は,ちょっと立案当局としては考えられない選択肢だろうと。そうなりますと,諸外国の,と申しますか,G8の一員としてそれなりに国際的な責務を果たすという観点も一つございますし,他方で他の予備罪,共謀罪等のバランス論等を考えましたときに,5年以下なり3年以下,特に傷害でございましたら3年以下と。ここは,あとは量刑の問題で様々でございますし,しかも組織性の要件がかぶった,そういう共謀であるということからまいりますと,この程度の法定刑を上限として考えておくというのが適当ではないかと考えたということでございます。 ● ○○委員の方からも話があったのですが,実際問題,長期4年以上という形については資料7の中にいろいろなリストが挙がっているのですが,これを眺めてみた場合,果たして重大犯罪と言えるのかどうかという形で首をかしげるような犯罪も入っている。例えば,不同意堕胎罪とか,そういうものが入っているのですね。それぞれの国が,それぞれの意識でもってこういう犯罪は重大犯罪だというふうな定義をされていると思うのですが,日本の場合はかなりオーバーラップする形で,法定刑の広さもあって広がっている部分があるのですね。ですから,場合によってはこれを長期4年を全部抜き出すような形ではなくて,もっと狭めるという議論は可能性としてあるのですかね。 ● 条約で重大な犯罪は4年以上の拘禁刑に当たるものということが定義されてしまっておりますので,それを国内立法化で更に限定するということは条約違反になってしまいます。 ● そこら辺の関係で言いますと,もとに戻りますけれども,性質上国際的だと,あるいは越境的な犯罪だという形のものに限定を加えるとか何かしていけば,狭めることは全然問題ないですよね。34条という規定がありますけれども。34条は,そういうふうに定めなければならないというふうに言っているのではなくて,現実には34条はそういう定め方ができるというふうに読めるのじゃないですかね。 ● 34条2項は,関係なく定めなさいという義務的な規定であるというふうに解釈をしております。  条文を見ると「shall be」と書いてありますから,相当強いのだろうなと思うわけであります。 ● 骨子の一の刑の減免の点でございますが,「減軽又は免除する」とされております。政策的な考慮である以上,一律に免除という線もあり得ると思うのです。ただ,情状によっては減軽という線が出てくることももちろん分かりますが,法定刑は5年以下の懲役・禁錮,それから3年以下の懲役・禁錮ですので,あるいは免除だけでもいけるのではないかという気もします。その辺はいかがでしょうか。 ● 確かに,例えば内乱予備なんかの場合には必要的免除の規定が刑法上もあるわけでございますが,ここで取り上げている共謀の対象となる犯罪が非常に広範囲なものでございまして,いろいろな犯罪につきましてのそういう必要的免除とか減軽の規定を見ますと,必ずしも必要的免除の事例というのは特別なものでありまして,身代金の関係とかサリンの発散とか,組織的殺人等も含めまして必要的減免と,減軽又は免除としている例が多うございますので,一般的な形で幅を持たせて,事案に対応しやすいような形をとっておるということでございます。 ● どうぞ,御発言ください。 ● ちょっと細かいところで確認させていただきたいのですけれども。  骨子の第一の一のところの「団体の活動として」という点,これが読み方によって「行われるものの」にかかるのか,それとも「共謀した」にかかるのかというのが,ちょっと分かりにくいような気がいたします。あとの解釈の疑義を残さないためにも,ちょっとこの点,教えていただければというのが一点。  もう一点ですが,最初に質問した陰謀と共謀の関係の関連ですけれども,現行法で陰謀罪が既に存在する罪がございます。例えば内乱とか外患誘致とか,そういうふうなものがそうだと思うのですけれども,こういうものについて,要するにそういう合意が行われた場合は陰謀になるのか共謀になるのか,この辺りの点はどのようにお考えなのか,あるいは両罪成立するというお考えなのか,この点を教えていただければと思うのですけれども。 ● まず,前半の「団体の活動として」の受けかかりの問題でございます。確かに,「活動として」の後に「、」を打ってございますので,それがどこにかかるかというのでやや読みにくいという御感触かなと思いますが,−−結論からいきますと,これは「行われるもの」にかかるということであります。  それはどうしてかといいますと,ここで使っております「団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われる」という要件は,これは先刻申し上げておりますとおり,組織的犯罪処罰法の3条とか,6条,7条とか,そういうところで使っておる要件をそのまま借用してきておるわけでございますが,そちらの方を見ますと,「団体の活動として」が「行われる」にかかるということがより明確に読みやすいので,一連の解釈としてそのようなものと御理解いただけるのではないかと思います。  他方で,団体の活動として共謀するということは,意味的には,ちょっと難しいかなという感じもございます。  二点目は,例えば内乱の陰謀も立つし,組織的共謀も立つというような場合に,どういう罪数になるかと,そういう御質問でございますか。 ● そうです。 ● そういたしますと,ここは内乱陰謀の法定刑が相当重いわけでございますので,そちらは特別な陰謀罪だということで,内乱陰謀が立つと。その場合,組織的共謀の方は残す必要は,あえて処罰する必要はございませんので,罪数的には吸収のような形になってしまうのでしょうか,特別の関係になるのでしょうかね,要するに,内乱の陰謀の方が成立するという結論になることは,間違いないはずです。 ● 要するに,法条競合の特別関係のような関係になると。  そうすると,例えば今挙げた例では非常に陰謀罪が重いケースですけれども,逆に陰謀罪の方が軽いような罪というのも現に挙がっていると思うのですけれども,そういうものについてはむしろ同じように特別関係で共謀罪が成立する,そういう理解になるわけですか。 ● 一般的に陰謀と共謀が同旨の規定だといたしましても,こちらは組織的な態様の要件が加わっておりますから,こちらが組織的共謀罪の特別関係に立つというのが一般的な構造になります。  ただ,それに対して内乱陰謀がかなり重い刑を定めているので,内乱という事柄につきまして特にこちらを前提にしても,なおかつ特別な何か刑を定めたという理解ができるのかなと,今考えておるところでございます。 ● いただいた共謀罪・陰謀罪の現行条文一覧というのを見ますと,共謀罪・陰謀罪というのは特色があるものが定められているなというふうに見えるのですが,一つは非常に政治的といいますか,自衛隊法の中でも最近では秘密に関するものが規定されていますけれども,そういうものとか,日米相互防衛援助協定,MSA協定に伴う秘密保護法の場合とかいうふうになっていますので,ある意味で言うと政治性のあるものが一つ,それともう一つはモーターボート,小型自動車,競馬法,自転車競技というふうになっていますので,それ自体は個人的に行われても,実質上組織的に行われるであろう−−こういうふうに言ってしまっていいのかどうかというのはあるのですが,実際上は競輪・競馬のこういう関係のものは,そういう組織犯罪的なものとして行われる例もかなり多いというふうに思うので,そういったものとして規定されているようにも見えるのですが,こういうものだけに共謀・陰謀が絞られて今まで来ているのですが,今回,長期4年以上ということで,組織性の網をかぶせるとしてもこれだけ広がるわけですが,その辺,今回一挙に広がるというのは,その理由というのは条約上やむを得ないということだけでよろしいのですか。私どもの理解としては。 ● 条約に入る以上はやむを得ないというのが,まず一つございますが,ただそれだけではなくて,そのような犯罪を共謀罪−−ほかの犯罪化もそうですが,そのような罰則の整備をすることによりまして,国内でその種の−−例えば,今現在でいけば共謀共同正犯になって事件として処理されているものが,共謀段階で検挙の可能性があるものにつきましては,適切な早期の介入が可能になると,しかもそれが条約に入ることによって,他の国との捜査共助等々も円滑に進むようになりまして,国際的に行われた場合でも適切な対処が可能になるということで,国内的な意義も相応に見出されるだろうと思います。 ● いかがでしょうか。一番最後のところでもう一度全体を見て御意見を賜るという機会もあるわけではございますが,そろそろ第二点の方に移らせていただいても……。 ● 一点だけ,今の点に追加させていただきますと,組織犯罪が関与することが間々あるという御指摘でございましたけれども,モーターボート等の共謀罪というものを見てまいりますと,必ずしも犯罪組織が関与するからということで設けられたわけではございませんで,実行されるととんでもないという観点から,共謀の段階で罰則を設けることにしたのではないかとも思われるわけでございまして,その意味では今回条約でこういう一定の法定刑のものについては実行の前で防止するための共謀罪という形,あるいは結社罪という形での犯罪化を各国に義務付けているところと,その意味では相通ずるものがあろうかと考えております。 ● それでは,第一の二の方でありますが,不正権益に関する罪の趣旨については前回御説明を伺って理解したつもりですが,第一の一の方では,現行の組織犯罪処罰法と平仄を合わせるといいますか,その点に力点が置かれたように思います。そうしますと,一の方でいわば総則的に調和を図ったとすれば,二の方でも各則的にそういう配慮をしなくてもいいかどうか,現行の組織犯罪処罰法の3条2項では,若干の犯罪を除いてあると思いますが,賭博とか詐欺とかを除いてあると思いますが,そのこと自体の当否は別にしまして,両方不調和でいいかという点をちょっと疑問にしたいと思います。 ● 質問の御趣旨を正確に理解したかどうか,自信がない点がございますが,3条1項の方も,要するに組織的態様の要件の違法性の程度等にかんがみて現行の法定刑では足りないところを修正したということでございまして,第2項は,不正権益の観点からは,そこまでの法定刑の修正をする必要がないものを除いた,除いたというよりは法定刑を修正する必要性のある限度が変わってきたということにすぎないと思います。  なお,この1項の組織的態様の要件と2項の不正権益の要件で,3条で掲げられた罪に差があるのは事実でございますけれども,例えばそこの具体的な内容につきましては,6条とか7条では,両方いずれもそういう個々の罪名の限定はせずに,一括のものとして,例えば組織的犯罪に係る犯人蔵匿等を加重処罰するということにしておりまして,結局いろいろな罪が対象にくる以上,性質上不正権益目的で行われることがほとんどあり得ないということがあるとすれば,それは空振りになってしまう,およそ全部の罪のリストアップをして除き切れるものじゃないだろうし,今後いろいろな犯罪も出たり消えたりするということでございまして,こういう共謀罪の枠組みを作るに当たっては,違法性の高い,特に組織的犯罪の関与により違法性が高くなると考えられる枠組みを設定するということで足りるのではないかと考えておるところであります。 ● 御発言を求めます。 ● 今のところですけれども,大体分かったのですけれども,素朴に考えますと,組織犯罪としては団体の不正権益の関係で,特に詐欺罪の方ですね,4年以上ということで。この詐欺罪が除かれているわけですが,組織犯罪にはならないと。不正権益の関係で。と言っておきながら,共謀の段階ではなりますよというのは,ちょっと何となくということで,6条等の関係を引き合いに出されたことは分かるのですが,そういうことでしょうか。つまり,念のためにもう一度伺いたい,こういう趣旨ですけれども。 ● 団体の活動として,その組織によりというのはそういう指揮命令系統があったり,役割分担が行われる中で犯罪が行われることによる結果発生の確実性とか,そういう意味での違法性の高さの観点からやっておるのに対して,不正権益というものは,団体の威力に基づく支配力のようなものであると。ある程度威力的な団体の活動というものが前提になっておりますので,そこで想定される団体に若干1項と2項で違いが出てくることはある,そういうことでございます。 ● この共謀というのは,未遂とか既遂とかいう概念はない。今度の共謀罪ですね。順次共謀というのも共謀共同正犯のときにはありますよね。順次共謀をしていたときに,その共謀−−着手と言うのですか,だんだん共謀ができてくる場合もあるし,最初から明確な犯罪の意図と実行行為の内容があって,そこに順次いろいろなものが加わっていく場合というのがありますね。最初に明確なものがある場合は,ある一人の人間が明確な意図を持って,ある別の人間と共謀したと。そこで一つ共謀が成立して,それから次々に別の者が加わってくるとなると,次はまた別の共謀ではなくて一つの共謀が広がっていったというふうに考えるのでしょうか。  そうでなくて,だんだん意思がある人間からつながっていくのだけれども,醸成されていって最後にまとまるというような場合は,最後の段階が共謀の成立。だから,着手みたいな概念が,実行行為のあと着手とかあるわけですけれども,そういうものは共謀にあるのかということです。 ● 未遂処罰規定が置いてございませんので,もちろん既遂の場合だけを処罰するということでございます。着手というものは,そういう意味で実益がどれだけあるかというと,少しは少なくなるかなと思いますが,犯罪の遂行の合意に達する相談を始めた辺りが,強いて言えば着手かもしれません。結局,合意が成立したということによって共謀は既遂に達するということになります。  共謀罪の犯罪の性質として,継続犯的に考えるか状態犯的に考えるかという点につきましては,委員・幹事の先生方の御感触等も伺いたいと思いますが,多分に犯罪の実行に向けて発展していく性格の犯罪なんだろうなと思うわけでございまして,そういう意味で継続犯的な理解の方がしやすいかなと,私は思っております。  そうしますと,順次共謀というものは,そこで既に一定の人数ででき上がった共謀,意思の合致の中に,更に別な人が加わってきて,そこの共謀の輪が広がった状態で,同じ犯罪の実行に向けて成長していく過程としてとらえられるのではないかと思っております。 ● 先ほどのあれで,共謀の幇助とかがあるという……,場所を貸すとかですね。そうすると,場所貸しだとかそういうものというのは,まだ漠然とした段階で場所を貸すことが多いのではないかと。明確に,あることをやるというより,漠然といっても犯罪意思といいますか,犯罪に向けて行うことはあっても,人を殺すという相談をするというときに場所を貸す,しかし共謀としてはまだ成立していない。成立していないというか,これから話し合うというようなときは,それはもう幇助行為にもならない。 ● それは,そこで言う幇助は従属犯たる幇助ですので,その幇助行為によって共謀罪が成立すれば,その段階で幇助に当たる行為があれば幇助犯が成立するということになると思います。 ● では,要綱の第二の「証人等買収」の罪,これに関しても御意見を承りたいと思います。 ● 確認しておきたいと思いますが,前回も私,この点について御質問しましたが,本犯の犯罪がそれぞれのいろいろな法律の中で区々ばらばらの法定刑を持っていると。それとの関係で,贈収賄的に理解するにしても,1年以下の懲役又は20万円以下の罰金というのでいいのかということをお伺いして,そこでは独自の審判作用の公正さとおっしゃいましたか,ちょっとよく覚えておりませんが,そういう独自の保護法益があるというのが○○幹事からの御説明だったかに覚えておりますけれども,結局のところ私の疑問は,こういう行為を行った後に,頼まれた人間,利益を受供与した方が現実に個々の個別の行為を実行した場合に,その犯罪が成立するとともに,金銭を供与し,買収した人間には教唆犯が成立するか,あるいは共謀共同正犯が成立して,そしてそっちの法定刑が重いときはそっちに吸収され,そっちの法定刑が軽いときはこっちの罪が併合罪あるいは観念的競合等として残る,こういう理解でよろしいのでございましょうか。 ● 罪数的には,観念的競合になるというふうに理解しております。保護法益として,この要綱(骨子)第二の「証人等買収」の罪は,個々の刑事手続における判断の適正というよりもう少し前段階のところで,一般的に証言の内容とか証拠物の存否の内容が買収によりゆがめられていない,外部からの不当な干渉によってゆがめられていないということ,及びそれに対する社会一般の信頼というものに設定いたしまして,個別の証拠隠滅罪,偽証罪等の保護法益と若干区別をいたしますことによって,観念的競合という罪数関係になるのではないかと理解しているところです。 ● 証人等買収罪の対象となる犯罪ですが,1のところでは,条約の23条に規定する犯罪化義務に対応する罰則に定める罪ということになっていますが,そのまま読みますと,この証人等買収罪も入るということになりますね。 ● 証人等買収罪が行われまして,例えばそれが刑事事件になっているときに,その偽証,例えば証人に対して金をやると,それはそれで新しい証人等買収罪が立つわけでございます。 ● 理論的あるいは実務的に何かお考えがあれば,お聞かせください。 ● 例えば,私ども弁護士が,ある刑事事件なり民事事件なり,そういう形で証人にお願いした人がいるといった場合,全く自分と利害関係がない場合について,例えば喫茶店等で打合せをしたり,あるいは事務所に来ていただいてやったりして,お車代を渡したり,そこで飲食代を払うことがあるのです。協力してくれたということで。その辺りのところは,この規定で言っている「報酬として」という形になるのかならないのかが非常に興味,関心のあるところなものですから……。 ● 「報酬として」の話に入ります前の段階といたしまして,このような虚偽の証言をすること,証拠の隠滅をすることの報酬としてという事態が,ちょっと弁護士の先生の場合に一般的には想定できないのでありますが,なおかつ対価性ということでございます。ここで言っております報酬と申しますのは,そういった偽証等の行うことの報酬という,対価性を要するものということでございます。 ● どうでしょうか,想像をたくましゅうして質問をしてくださっても結構ですが。 ● この証人等買収については,2で重大犯罪一般についても成立するということになっておりますが,この規定もやはり組対法の方に入るということになりますのでしょうか。少し組織的犯罪とは必ずしも言えないような感じがするのですが。 ● この証人等買収の2の方の組織犯事件についての証人等買収につきましては,要件の枠組みから組織犯罪処罰法に入りやすいだろうと思うわけでございますが,一の方の基本犯形態をどこに置くかというのは,立案段階でよく検討しなければならない問題だろうと思っております。しかしながら,刑法典としての刑法に入りやすいかというと,これが重大な犯罪,4年以上ぐらいは若干御勘弁いただくとしても,1の方の条約が指定した犯罪というのが対象犯罪で非常にいびつな形で入っているというのは,一般的な犯罪の性格というところからいくと,ちょっと見苦しいかなと思いまして,そういたしますとどこか適当な形での置きどころを考えていかなければならない。ただ,その中の可能性の一つとしては,組織犯罪処罰法も可能性はあるのじゃないかなとは思っております。 ● あるいは,別に強い意見ということでも何でもないのですが,この4年以上というような罪のところまでは広げないというような選択はあり得ないということ。 ● この対象となる事件の範囲は,条約上の要求ですので,これが条約上の要求の最低限の範囲になっておりますので,これより狭くはできないということでございます。 ● これについては,組織的云々の要件をかけられないということですか。 ● 34条2項のところで,国内的には組織性,国際性に関係なく定めると。ただ,共謀罪のところだけは特にできるというただし書が書いてあるということであります。 ● もしかすると先回お答えいただいたのかもしれないのですけれども,あるいはお話があったのかもしれませんが,こういう犯罪を作るときに二つぐらい可能性があって,一つはこういう買収的な,あるいは贈収賄的な構成といいますかね。もう1個は,司法妨害の独立教唆みたいな形で構成するということも可能で,どうして買収的な方向を採られたのかというのを,もし御説明いただければということと,買収的なやり方,要するに贈収賄類似というふうになると,何となくいわば我々国民全員が司法妨害をしない一般的義務を持っている,身分を持っているみたいな形で,それを国民が信頼していて違反したみたいな,そういった何か国民全員に司法を何かする義務を一般的に課するみたいなイメージにどうもなってくるのではないか,もしそういうふうに考えるとすると,それこそ収賄の方を処罰しないのはおかしいじゃないかという議論にまでつながってきて,場合によってはこの場合に必要的共犯といいますか,かかわった相手方を処罰するかしないかという議論にもちょっと影響が出てくるのかなという気がする。どっちで理論構成するか,あるいはどっちで立法するかによって随分違ってくるのじゃないかという気がするのですけれども。 ● なかなか難しい,たくさんの御質問でございましたけれども,まず独立教唆の形を採らなかったかということにつきましては,一つは独立教唆ということになりますと,本犯たるものの保護法益というものが一番メインに出てくるのだろうと。そういたしますと,例えば偽証,証拠隠滅なら証拠隠滅という結果犯部分,そこが表に出てくるのだろうということになりますと,この条約自体は偽証とか証拠隠滅行為の犯罪化というものは全然言っていなくて,むしろその前段階の不当な干渉を,買収だけじゃなくて暴力的な形も併せてですけれども,暴力又は買収による不当な干渉を排除しようという義務を課しておるということがありまして,そういう条約の基本的なスタンスとの整合性を考えますと,不当な干渉という形の犯罪構成が適当だろうなというのが一つであります。  実質的な理由ではありませんが,独立教唆的にやると本犯たる刑がばらついていて,美しくないということもございましたし,あと独立教唆という形は,今の我が国の刑罰体系の中では極めて例外的にしか設けられていないということもございまして,そういうことを考慮いたしまして,御提示しておるような形を採ったということでございます。  二点目に,何か非常に司法を妨害しないことについて国民に義務を課するような形にならないかというような御指摘もあったやに思いますが,一般的に妨害しないということは,ある意味では司法に協力するという意味では当然のことかもしれませんが,いずれにいたしましてもここで犯罪化している内容は,偽証するとか証拠隠滅するとかいうことの報酬として買収を禁じているわけでありまして,そういう積極的な強い違法行為,妨害行為は犯罪になりますよという意味での規範にはなると思いますが,とても広い司法協力の義務を,新たに国民に課したことにはならないだろうと,これの罰則について特に課したとということにはならないだろうと思っておるわけであります。 ● まだ若干の時間がございますが,いかがでしょうか。 ● 私もわいろ罪に類する罪だという御説明が,前回必ずしもよく分からなかったのですが,確かに行為の態様はそのとおりなのですけれども,かつ,司法妨害罪でないというのは,要するに信頼を害するというところですね。ですが,わいろの場合に信頼を害するというのをくっつけるのは,これは私の理解かもしれませんが,要するに職務が公正であっても成立するからわいろ罪の場合は信頼を害するというのを付けるのだと思うのですが,こちらの場合は要するに偽証だとか証拠隠滅だとかいう不当な行為ですから,信頼を害するというのは付け加わらないのではないかというふうに思うのですが。  ですから,わいろ罪と一緒であるというのは,行為態様だけを理由にした,少し内容に乏しい,そういう説明では内容に乏しいということになるのではないかという気がするのですが。 ● 形態がわいろに似ているという点はまず間違いないというところがあると思いますが,一般的なわいろ罪の場合の収賄者の地位・権限みたいなものと,ここで利益供与を受けるたまたま訴訟人とか何とかになって一般国民の一過性の,しかもかなり受動的な地位とか権限みたいなものを考えますと,信頼を害するということの意味が若干違ってくるのかなとは思いますけれども,ただそれが,受動的であれ司法の要求に応じて証言するとか証拠を提出するとかいう義務の履行が買収によってゆがめられるという意味では,基本的な性格はわいろ的なものがあるだろうというふうには考えております。 ● そろそろ時間になりましたので,今の問題,もう少しお考えくださって次回に御発言賜るということでも結構ですが,一応次回は第三の「犯罪収益規制等」以下に関する御意見を承りたいと思います。  次回は,既に御案内してございますが,11月1日金曜日に,この会議室が確保されておりますので,本日と同様,午後1時30分からこの場において会議を行うことにいたします。次回は第3回ということになります。内容としては,要綱の第三の一以降議論を続けて,第四の「国外犯処罰」まで一通り議論をいたし,皆様の御感触を承りたいと存じます。  本日の議論を踏まえまして,事務当局から補足的な説明等がもしあればそれを伺い,関連質疑をするというようなことで次回は進め,第4回は要綱(骨子)の全体についての御意見を承るというような段取りにしたいと存じます。  長時間にわたって御協力くださり,ありがとうございました。どうぞ次回も活発に議論をお願いいたしたいと思います。