破防法・組対法に反対する共同行動
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法務省の大嘘を暴く
思想処罰・団結禁止の共謀罪は
廃案しかない!
 思想処罰・団結禁止の共謀罪法案が、10月5日、特別国会に再々上程され、強行
成立が狙われている。通常国会の7月12日審議で答弁不能に陥った法務省が、法案
の手直しすらすることなく、与党の数の力のみを頼りに、短時間・密室審議での制定
を狙っているのだ。自民党・公明党議員が“慎重審議を”“修正を”とした茶番劇の
舌の根も乾かないなかでの、この暴挙を私たちは絶対に許さない。法務省・与党は恥
を知るべきである。
 新聞・雑誌・TVなどで「現代の治安維持法」「警察が盗聴し放題の超監視社会
へ」と批判されたように共謀罪法案は稀代の悪法である。共謀の目的も主体も無限定
な共謀罪新設は、思想処罰・団結禁止を狙う現代版の治安維持法であり、警察にオー
ルマイティーの武器を与えるものだ。
 法務省の暴走をストップさせるために、共謀罪法案に対する批判を、7月12日衆
院法務委審議を中心にまとめてみる。審議での共謀罪にかかわる政府答弁の基本線は、
「法案は処罰すべき必要性が高い重大かつ組織的な犯罪の共謀に限って処罰することといた
したものでございまして、我が国の刑事法の原則に沿うものである」「法案の共謀罪
はすべての犯罪の共謀を一般的に処罰するものではない」(大林法務省刑事局長)と
大嘘を並び立てたものであった。その上で“共謀罪の構成要件がわかりにくい、思想
処罰になる、労組・市民団体が適用対象になる、対象が広すぎる、などとの批判があ
ることを承知しているが、条約批准のためでありやむおえない、誤解を招かないよう
にしたい”と居直ったものであった。
 【1】共謀罪新設は憲法違反                      
 4月20日、民主党簗瀬議員が参院本会議の代表質問で、「憲法の保障する全ての
人権の出発点が憲法19条の内心の自由である。内心は自由であり、内心は罪に問わ
れるべきではない。その基本思想が刑法典に反映した結果、犯罪の実行行為に着手す
る前に罪に問う予備・陰謀罪は、現行法典ではたったの6つしか認めていない。国連
越境犯罪防止条約の国内法化を図るいわゆる共謀罪法案は、…共謀関係をむしろ原則
化し、刑法の原則どころか憲法19条を形骸化し、安易な警察権力の発動を導くこと
によって、この国の自由な精神社会は根本から蝕まれていく、それでいいはずがな
い」と共謀罪法案を批判した。まさに共謀罪の問題とは、憲法・近代刑法原則の根幹
に関わる、そして市民生活の自由に関わる大問題なのだ。
 7.12審議でも共謀罪法案の憲法との関連とその歴史的性格が問題となった。し
かし民主党議員の「(共謀罪と同じく思想処罰の)治安維持法は憲法違反ではない
か」との質問に対して、南野法相は頑なに憲法違反だと答弁しなかった。治安維持法
を否定したポツダム宣言・人権指令の上に現憲法が成立したことは歴史的に明らかで
あり、南野法相は閣僚としての憲法遵守義務を否定しているに等しい。1943年の
創価教育学会事件で牧口常三郎・戸田城聖を治安維持法違反で検挙された公明党の富
田副大臣(元政務官)が「悪法」だと断定しているにもかかわらず、である。
 法務省は7.12審議で共謀罪法案は「決して思想の処罰に近づくものではありま
せん」と必死になって反論した。しかし審議は、南野法相・富田政務官が答弁につ
まって何回もストップし、思想処罰・団結禁止法であることが露わとなっていった。
共謀罪新設によって「思想及び良心の自由」「集会・結社・表現の自由」など憲法に
保障される権利は大きく侵害されることが明らかになった。共謀罪は、手直しによっ
てはその危険性を減じることは出来ない。稀代の治安法は永久に葬り去るしかないの
だ。
 共謀罪法案は人権の領域での改憲攻撃である。自民党新憲法草案(05.8.1)
は、憲法第12条[国民の責務]「公共の福祉のためにこれを利用する責任」を「自
由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反し
ないよう自由を享受し、権利を行使する責務」に改悪しようとしている。今までも
「公共の福祉」の名の下で種々の権利圧殺がなされてきたが、これを更に「公益」
「公の秩序」にまで絶対化し、基本権としての自由を山田元警察庁長官らが煽動する
「安全の中の自由」に落とし込めるものだ。憲法改悪は現在進行形なのだ。
【2】共謀罪新設は罪刑法定主義、行為主義などの日本刑法の原則を転換する 
?日本の刑法は法益侵害・実行処罰原則のうえに成り立っている(既遂・未遂)。殺
人など重大犯罪に限定して予備罪もあるが、処罰はそこまでであり、「考えただけで
処罰する」ことは原則的に許されていない。刑法に定められた罪は約160、うち未
遂罪があるのは約60(3分の1)、予備罪は6である。しかも予備罪の適用は極少
数である。ここに特別刑法を含め619もの独立共謀罪(考えただけで処罰する)が
加われば刑法の原則が大転換することは子供にもわかることだ。しかし法務省は「断
じがたい」と居直っている。
 しかも共謀独立処罰である。法務省の説明は既遂→未遂→予備→共謀と、単純に予
備の前段としての共謀処罰であるかのように言っているが、実はそうではない。未遂
・予備処罰が定められていない行為を共謀罪で取り締まれるようになるのだ。実行着
手に至る共謀は、実行に着手しない、その場だけの民衆の恨み・表現のごくごく一部
に過ぎない。そして共謀の独立処罰は、こうした民衆の恨み・内心を処罰すること
で、多くの冤罪を生み出すのだ。
?法務省は、なぜ共謀罪新設なのかについても、現行法規に陰謀・共謀規定があり親
和的だからとしか説明しない。しかし広範な独立共謀罪新設は、「親和的」どころか
現行刑法を大転換させる。日本政府は「共謀罪・参加罪は日本刑法の原則と両立しな
い」と主張してきたはずだ。
 国際的(越境)組織犯罪条約第5条「組織的犯罪集団への参加の犯罪化」は、
(a)?)合意罪?)参加罪(b)実行組織・援助・相談罪の制定を求めているが、
共謀罪導入を絶対条件としているわけではない。日米同盟のもとでアメリカCIA・
FBIと共同捜査するためにあえて共謀罪新設の道を選んだのではないか、との疑念
が残る。いずれにしろ共謀罪法案は条約の(a)?)?)(b)を、どう具体化した
ものか?不明である。各規定のなかで都合の良いところだけを抜き出してきたもので
ある。 
 【3】条約起草過程で日本政府の立場が転換した理由は隠されたままである 
?国際的組織犯罪条約は「21世紀のグローバル・スタンダード」と警察庁の担当者
が豪語するような極めて重大な多国間の治安条約である。国会にも図らず勝手に外務
省・法務省・警察庁が推進したこと自体が問題であり、最低限、法務省・外務省は共
謀罪法案の前提になっている条約審議の全資料を公開しなければならない。外務省・
法務省・警察庁が民衆や国会の上に立つことは絶対に許されない。
 条約交渉記録の墨塗りについての法務委員会からの資料請求に対して法務省は全面
公開を今も拒否している。条約審議過程の肝腎な所を墨塗りで伏せ、国政調査権を
使って明らかにするよう迫っても、国連ホームページ等をつなぎあわせた文書回答し
かださないという図々しさなのだ。問題となっている条約交渉過程のペーパーを官僚
が見せず、法相が見ようともせず、条約締結承認案の国会審議で誰も問題にしないと
いう立法府というには恥ずかしい状態が、国会審議の底部に流れている。「条約立
法」「国際協力」などと言うが、日本の刑事法の根幹に関わることが外務省・法務省
・警察庁官僚の手によって勝手に決められているのが実態であり「徹底審議」すべき
だ。
 条約交渉過程ならともかくも国内法化の段階で「他国との信頼関係が損なわれるお
それがあるため公開しない」との法務省の言い訳は通用しない。日本の民衆との「信
頼関係」などどうでもいいということだ。墨塗り部分には「共謀罪・参加罪は日本刑
法の原則と両立しない」と主張してきた日本政府見解が転換した重大な秘密が記載さ
れているはずだ。
?国際的組織犯罪条約の「目的は、国際的組織犯罪をより効果的に防止」することに
ある(第1条)。したがって国内法整備についてもその趣旨に沿うことは当然のこと
である。にもかかわらず共謀罪法案は、純然たる国内事案をも対象と出来るようにつ
くられている。これは奇怪なことだ。そこで法務省が持ち出したのが、条約の趣旨を
逸脱する条約34条2項の例外規定であり、大林法務省刑事局長は「仮に法案の共謀
罪に国際性の要件を付した場合、本条約を締結できなくなる」とまでいうが、理由を
十分に説明していない。法務省は、とりわけ条約34条1項の国内法の基本原則遵守
義務との関係を説明する必要がある。これは条約解釈の問題ではない。アメリカなど
既に共謀罪が導入されている場合はともかく、日本では国内法の原則=実行行為処罰
原則と共謀独立処罰導入は明らかに衝突する。条約に定められた2つの義務が衝突し
ているのだ。刑法の原則がいつ変わったのか、条約交渉の最終局面で突如挿入された
34条2項の制定経緯と日本政府の見解を、法務省は説明する義務を負っている。
?そもそも条約審議過程での日本政府見解(1999年春)は「すべての重大犯罪の
共謀と準備の行為を犯罪化することは我々の法原則と両立しない。さらに、我々の法
制度は具体的な犯罪への関与と無関係に、一定の犯罪集団への参加そのものを犯罪化
するいかなる規定も持っていない」であったはずだ。このような日本政府の原理的な
立場がいつ、どのようにして変更されたのか、納得のいく説明は今もなされていな
い。
【4】共謀罪法案は政府に都合のいいように条約を解釈して作られた     
 共謀罪法案は、内容的にも国際的組織犯罪条約第5条が求める「参加の犯罪化」規
定を大きく越えるものとして立案されたことが審議で明らかになった。「基本的には
条約と一致している」との法務省答弁が様々な点で崩れ、共謀罪以外にも証人買収罪
や犯罪収益拡大など危険な条文を付け加えている。
 共謀罪に限っても、たとえば「金銭的利益その他の物質的利益を得ることを直接又
は間接に関連する目的で」との規定をはずしている。条約が目的というかたちで犯罪
化を限定しているのにあえてはずしたのは「政治的・宗教的・精神的な目的」での共
謀を処罰対象とするためである。条約では「純粋に精神的なもの、宗教的なものある
いは政治的なものは除外される」(小野寺外務省政務官)が、共謀罪法案では対象に
なっているのだ。条約が「故意に行われた行為を犯罪化」としているのに過失犯も含
める、「当該合意の内容を推進するための行為」(オーバートアクト)規定も設けな
いなど、政府に都合のいいように作っているのだ。
 日本政府が最も卑劣なのは、条約審議では共謀罪に「組織的な犯罪集団が関与する
もの」との要件を加えるべきだと主張し明文化させながら、いざ国内法化する段に
なったら、組織的犯罪集団関与の要件を入れないという点に端的に現れている。
【5】立法事実が国内的にない治安法制定は許されない          
?法律はなんらかの立法事実があるから制定される。しかし法務省は法制審議会での
説明で国際的責任を果たすための立法で「国内的には立法事実がない」と答えてい
る。7.12審議でも立法事実は曖昧にしか説明できなかった。「立法事実がない」
ことを認めながら立法するというのはまことに奇怪なことだ。ここから出てくる結論
は、日本には必要のない治安法だということである。必要のないものはいらない。人
権の制限にかかわる治安法の場合、治安法は自己増殖を不可避とする以上、これは厳
格に守られなければならない。
「治安が急激に悪化している」とのキャンペーンは偽りである。それは、今まで警察
が取り扱わなかった事件を含めた政治的な統計的操作の結果にすぎない(浜井浩一
「検証『治安悪化と刑事政策の転換」『世界』2005年3月号)。マッチポンプよ
ろしく今年の犯罪件数は減少し、検挙率は上がっている。
暴力団などの組織犯罪も増えていない。検挙人員でみれば1992年の33970
件から2003年の30550件に漸減している。外国人犯罪の凶悪化・急増、それ
への暴力団の関与も為にする主張である。組織犯罪処罰法もおれおれ詐欺など組対法
の対象なのか疑わしい事例にまで拡大適用した結果増加しているが、全体に件数は少
なく、刑法原則の転換となるような新たな立法を必要とする状況には全くない。
?法務省は「国際的組織犯罪条約加入の条件」などと、外圧・国際的要請があるかの
ように言っている。しかし日本政府は条約案起草特別委員会副議長国であり、決して
外圧などではない。自ら21世紀の犯罪対策のグローバル・スタンダードと評価する
国際的組織犯罪条約制定を推し進めたのであり、嘘の外圧論など振り回さないほうが
いい。 日本の法務省・警察庁、そしてG8などの外交・治安機関が、自らの権力と
相互協力の強化で21世紀の矛盾の噴出を抑え込むために、労働者民衆の人権を制限
する国際的な治安条約制定を共同して推し進めたのだ。だから、日本政府は条約を拡
大解釈し、条約が求めていないものまでこの機に立法化ようとしているのだ。共謀罪
法案を必要としているのは法務省・警察庁である。
【6】労働組合・市民団体は適用対象でないとの大嘘           
 組対法は、 誰が読んでも会社や労働組合・市民団体など全ての集団を対象にして
いる。しかし法務省は答弁で、労働組合・市民団体は対象外であるかのような答弁を
している。なぜこのようなあからさまな「矛盾」が起きるのか?法務省の詐術はどう
いうものか?
?組織的犯罪処罰法の危険性
 99年に盗聴法と一緒に強行制定された組織的犯罪処罰法(組対法)にいう「団
体」は、政党・労働組合・市民団体・暴力団など、あらゆる集団のことである。三浦
法務省大臣官房審議官自ら「団体は暴力団その他犯罪の実行を目的とするものには限
定されない」としているのだ(『組織的犯罪対策関連三法の解説』)。また「目的自
体が違法・不当なものであることを要しない」としているように、ここには犯罪集団
への限定への意思はまったくない。組対法の対象は、“共同の目的をもつ継続的な集
団で、一定の系統性をもつもの”以上ではない。法務省は「厳格な組織犯罪の要件」
を付して適用対象を限定していると言うが、しかしその内容は、団体で役職や内部組
織の分担をもっている場合ということに過ぎない。どの団体もほとんど持っている組
織性、これが法務省の言う「厳格な組織犯罪の要件」の内容である。実務的にも、
組対法の団体・組織規定の曖昧さー会社などへの無限の適用拡大可能性は、既に横浜
紳士録販売詐欺事件で露呈している。一審では組対法適用棄却、二審では逆転して組
対法が適用されたのだ。夫婦が賭博場を貸して組対法を適用された事例すらある。
 もう一つは「団体の構成員でない者についても成立する」として弾圧対象を無限定
にしていることである(『Q&A 組織的犯罪対策三法』)。団体に関連する(その
事実を知っていながら加功した)と警察が見なした者は弁護士であれ支援者であれ対
象とされるのだ。組対法は、「国体・私有財産否定を否認する目的」規定をもつ治安
維持法、「暴力主義的破壊活動を行った団体」規定をもつ破壊活動防止法を上回る治
安法(現代版治安維持法)だ。 
?組対法に共謀罪が新設されることの危険性
 組対法に共謀罪が新設されることがもたらす特有の危険性がある。現行組対法は、
団体処罰を目的とするとはいえ、犯罪実行に刑の加重で対処することを軸にしてい
る。しかし、この組対法に共謀罪を新設するとき、新たな問題が生じる。「団体」
「組織」の概念が「共謀」に還元・等値されてしまう危険性が強まるのである。国際
的組織犯罪条約とも異なり組対法では「2人以上」が団体とされているが故に、この
危険性は看過できない。団体の「目的」は「合意」に、組織の「系統性・役割分担」
は「合意の程度・計画性」に溶解してしまう。要するに、犯罪を相談・合意したと
き、それは自動的に団体・組織と見なされうる。その結果、組対法の「団体」「組
織」概念は大きく変容する。
 たとえば、暴力団の「団体の活動として」暴力団員らが恐喝をしたとき組対法が適
用されてきた。共謀罪が新設されたとき、恐喝の合意があったことで、それは自動的
に「団体の活動として」「組織による」と見なされることになりかねないのだ。団体
の定義に組織性の要件を加えた「曖昧な」要件が共謀罪新設で更に溶解し、無規定に
なる危険性がある。
?法務省答弁の欺瞞と詐術
7.12審議で、大林法務省刑事局長は?「犯罪を目的とする」団体には適用す
る、「団体自体の目的がそういうものでない」場合は適用しない、と自民党・田村委
員に答弁した。更に公明党漆原議員に対して?「団体が有している共同の目的が犯罪
行為と相容れないような正当な団体」の場合は「団体として意思決定したとはいえな
いから」適用しない、と答弁した。??は似ているようだが、全く異なった区分であ
り、その混同を通じて言い逃れしようというのである。
 詐術は次のように組み立てられている。?は団体を目的の内容から、「犯罪目的組
織」と「非犯罪目的組織」(労組・市民団体)に区分するものであり(最初の組対法
案=事務局参考試案「犯罪を実行するための法人」がこれであったが、撤回され
た)、これによって適用対象があたかも暴力団等に限られてるかのように錯覚させ
る。次に?行為と目的の関係から、犯罪行為が「目的に沿う団体」と「目的と相容れ
ない団体」に区分し、労組・市民団体と「目的が犯罪行為と相容れない」団体とが同
一であるかのように瞞着するという手法である。
 しかしこの詐術は通用しない。通常、労働組合・市民団体などの目的はその実現手
段とは無関係に定められており、犯罪行為と必ずしも「相容れない」わけではない。
座り込みや不買運動・選挙運動などは労働組合・市民団体の「団体の目的に沿う」活
動であるが、警察が組織的な威力業務妨害や公職選挙法違反だとでっち上げることは
よくあることである。要するに法務省は答弁で、労働組合・市民団体を権力に従順な
(正当な)団体と権力に異を唱える(非正当的な)団体に恣意的に区分し、後者には
組対法を適用するとしたのだ。公明党漆原議員が「労働組合は対象にならない、市民
団体も対象にならない、会社の幹部も職員も対象になりえないというわけですよね。
絶対に対象にならぬわけですよ」とするのは、意図的瞞着か自慰かのいずれかに過ぎ
ない。
「(労働組合・市民団体に適用されないとの法務省答弁にたいして)本当にだれでも
同じ解釈にたどり着くようなそういう法文になっているか、まだ疑念が残っている」
(自民党早川議員)はずだ。「この法律は犯罪集団が対象なんだという風にはっきり
言ってあげた方が皆さん安心しますよ。団体が含まれるなんて言うものだからわけわ
からなくなって」(公明党漆原議員)あるいは「非常にわかりにくい構成要件」(大
林刑事局長)だと認めるのなら、そもそも組織的犯罪処罰法そのものを廃止して、出
直すべきであろう。法務省・与党が共同して演出してい
る「労働組合・市民団体には適用しない」とのデマゴギーに惑わされるわけにはいか
ない。
【7】「単に漠然とした相談や居酒屋で意気投合した程度では、共謀罪罪は成立しな
いか? 
 法務省は「処罰される『共謀』は、特定の犯罪が実行される危険性のある合意が成
立した場合を意味」するとし、居酒屋で会社員が意気投合した程度では犯罪にならな
いと反論する。「漠然とした相談」「意気投合した程度」では対象にならず「目的、
対象、手段、実行に至るまでの手順、各自の役割など」「具体性・特定性・現実性を
もった犯罪実行の意思の連絡」が必要だというのである。しかし前者と後者は程度の
問題にすぎない。「相談」「意気投合」と「具体性・特定性・現実性をもった犯罪実
行の意思の連絡」とを截然と区別することなど出来るわけがない。仮に「組織による
決定」としても同じである。共謀とは「意思の連絡」であり「黙示の共謀」すら判例
で認められている。合意の程度や確実さが問題なのではない。思想・内心を処罰する
こと自体が問題なのだ。
 傷害罪に共謀罪が新設されるが、暴行共謀罪はない。しかし「あいつをやってしま
おう」と合意したとき、傷害と暴行の合意をどう区別できるのか?出来るはずがな
い。にもかかわらず、警察が傷害を共謀したと見なせば共謀罪で逮捕できる構造に
なっている。冤罪は法の中にビルト・インされているのだ。また共謀罪法案では順次
共謀をも想定している。ある市民団体の中心メンバーが周りの仲間に順次、産業廃棄
物搬入阻止の相談や打ち合わせをすることは、実行に着手する前に、組織的な威力業
務妨害の共謀として弾圧されることになる。順次共謀の途中で仲間の意見によって中
止・放棄したらどうなるのか?「ある集団が殺人を共謀したが、結局やめた。それで
も共謀罪の対象か」と尋ねた民主党議員への答弁は、「対象になる」だった。
【8】共謀の後「準備行為をした場合」に処罰するとの修正は、危険を減じるか?
   
?富田副大臣は7.12審議でかつて共謀罪に反対していたことを暴露され、「誤解
していた部分があって」と言い訳し、「生の共謀」処罰ではなく、「共謀という行
為」を処罰するのだと法案を正当化する。意味不明だが、共謀罪を行為主義に粉飾し
ようとする先輩・漆原議員をみならい、合意に「顕示行為」を加える「修正」のこと
だとすれば、それは改悪治安維持法の「目的のためにする行為」処罰を正当化するも
のである(もしくは思想及び良心の自由と集会・結社・表現の自由とを殊更に区別し
て、後者の蹂躙はやむをえないとするものである)。
?「準備行為」の曖昧さ・まやかし・危険性
実行行為のない犯罪類型=共謀罪が内心の自由を露骨に侵害するとの批判を浴び
て、法務省は、「共謀し」「共謀に係わる犯罪の実行の準備行為が行われた場合に」
処罰すると法案修正する意向を持っていると伝えられる。しかしこれは法務省が形だ
け後退したものにすぎない。
「実行の準備行為」は実行・行為という言葉でごまかしているが、決して「犯罪の
着手」のことではない。「合意」以降で、「予備」以前の、なんらかの犯罪でない行
為をもって共謀が成立したとするものである。
「準備行為」とはアメリカのオーバートアクト(顕示行為)と同じであり、「犯罪
現場の下見」(公明新聞7月23日)が例としてあげられている。アメリカでは「合
意成立後の打ち合せ・電話連絡・手紙文書の発信交換・犯行手段の準備、逃走・犯行
隠避手段の準備などが通常の場合であるが、たとえば、政府転覆計画の合意の後に合
法的な共産党の集会に出席した事例のような特殊な顕示行為も認められている。」こ
れら一つ一つの行為ははなんら違法ではない。「公明新聞」は、準備行為導入で
「『意思』と『実行行為』の両方を犯罪成立の要件とする刑法の原則にもかなってく
る」などとしているが、準備行為は『実行行為』(犯罪の着手)ではなく、粉飾であ
る。
 要するに「準備行為」の要件とは、警察が共謀したと見なし、その一人が何か通常
と異なる行為をすれば共謀罪成立とするものである。買い物のために銀行で預金を下
ろすことを、警察は逃走の準備と推認し逮捕することができるのである。犯行の下見
なのか、仕事あるいは散歩なのか、どう区別するのだろうか。常識的に考えても、
「準備行為」を逐一規定することは出来ないし、万引の「準備行為」と贈収賄の「準
備行為」が同じはずがない。
 むしろ問題は準備行為規定導入は、警察が共謀のおそれがあると見なした者を常時
監視体制下におくことに結びつくことである。選挙ビラ入れ弾圧で露呈したように警
察が危険とみなす者を日常的に尾行でもしなければ、共謀+準備行為は立件できな
い。法務省は恐らく「準備行為」を共謀罪の構成要件としてではなく証拠に過ぎない
と考えている。逮捕してしまえば、後は暗黒裁判(例えば立証責任の転換)で処理で
きると考えているのである。
【9】619もの共謀罪新設は刑法原則を転覆する            
?法務省が「重大な犯罪」に限定したというのは全くの偽りであることが明らかに
なっている。法務省は「重大な犯罪に限定」「したがって、例えば、殺人罪、強盗
罪、監禁罪等の共謀は対象になりますが、暴行罪、脅迫罪等の共謀では本罪は成立し
ません」という。確かに暴行罪の共謀はないが、常習暴行罪にはできる。脅迫罪の共
謀はないが、組織的な強要罪にはできる。犯罪の最も多くを占める窃盗罪(万引な
ど)の共謀処罰も出来ることになる。「国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当
たることはあり得ません」などとよく言えるものだ。
 そもそも国際的組織犯罪条約は各国の法制の違いを無視して「その最長において4
年以上自由を剥奪する刑に処しうる犯罪」としている(第2条)。法定刑の幅が広い
日本ではほとんどの刑が重大犯罪になる。刑法はもとより、地方税法・地方自治法か
ら公職選挙法・政党助成法まで「国民の一般的な社会生活上の行為」を規制している
法律のほとんどが入っている。
?共謀罪が新設される罪が、窃盗・傷害などを含め615にものぼることが答弁に
よって判明した(後の回答では619)。法案上程時に約560とされていたのが、
2年余で急増していたのだ。しかも初め614と答弁、後に615と訂正した法務政
務官ですら何という罪が増えたのかという質問に答えられなかった。法務省が分から
ないのに、民衆に分かるわけもない。これではどんな相談が罪にあたり処罰されるの
かさえ分からない。「共謀罪については、何が許されて何がいけないのかというのが
全然はっきりしないわけですよ。それは、国民の側にとっても、自分の行動の行為規
範を立てるときに、何を基準にしていいかわからない。逆に言えば、為政者が何をす
るかわからないということが裏返しであるわけですよ。だからこれが危険な法案だと
いうことになっている」(民主党議員)。罪刑法定主義の破壊という以上に、警察に
フリーハンドを与える法案なのだ。
?共謀独立処罰、しかも619もの犯罪に新設というのでは、日本の刑事法体系の原
則は転換する。「これでは刑法の転換ではないか」「共謀罪法案は日本の刑法原則と
の関係で例外なのか、それとも原則となるののか」と質問した与党議員に対し、大林
刑事局長は「にわかに断じがたい」と答弁した。漆原議員は「言外に例外とおっ
しゃっている」などと自慰するが、大林刑事局長は実行行為処罰原則の破壊、極めて
広汎な罪の新設という共謀罪法案は、組織的犯罪処罰法すら改悪し、複数人を対象と
する第2刑法の制定であることを否定しなかったのだ。
【10】共謀罪は盗聴拡大など「新しい捜査手法」導入に直結している     
    
?7.12審議で大林刑事局長は「新たな捜査手法に係わる改正は今回は考えており
ません」と答弁した。あくまで「今回は」なのだ。法務省は、盗聴拡大・おとり捜査
・スパイ潜入などの「新たな捜査手法」導入について、「共謀罪の新設とは別の話」
「今後、その必要性などを検討すべきもの」と話をそらすだけで決して否定しない。
 しかし、99年組対法三法国会審議時に原田明夫法務省刑事局長(当時)が「新た
な捜査手法」を検討していると答弁している。また再上程された共謀罪新設を一部と
する「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一
部を改正する法律案」にはサイバー犯罪対策として「新たな捜査手法」の一部を組み
込んでいる。自民党は盗聴法拡大を提言している。スパイ育成やおとり捜査拡大、行
政盗聴を警察庁は検討している。法務省・最高裁は司法取引を検討している。子供だ
ましの答弁はやめることだ。
?法務省・警察庁は、どのように共謀の証拠を集め、立証しようというのか明らかに
すべきである。共謀の証拠とは何か?事件がないのに「黙示の共謀」をどう立証する
のか?順次共謀の場合の範囲はどのように確定するのか?法務省は「新たな捜査手法
を導入するものではあり
ません」という以上、その方法を示すべきである。アメリカでは、共謀罪は「検察官
のダーリン」「検察官の子供部屋における寵児」と呼ばれ、濫用されている。“あい
つをやって(殺って)しまおう”との叫びは、戦争と失業が吹き荒れる苛酷な世の中
では当り前のことでる。その言葉をとらえられ、殺人や傷害の共謀で警察に逮捕・取
り調べられて、否認を貫ける人は何人いるだろうか。警察・検察は必ずしも起訴する
必要もない。思想処罰・団体処罰の共謀罪は、どう手直ししようと、多くの犠牲者を
生むのだ。
?条約は「認識、故意、目的又は合意は、客観的な事実の状況により推認することが
できる」(第5条2)としているが、それは「新しい捜査手法」導入による監視強化
抜きに可能ではないし、条約も導入を勧めている。共謀罪の適用は、盗聴を拡大する
か合法的にスパイ活動・おとり捜査を行えるようにするか、あるいは共謀した当事者
が密告しない限り不可能に近いはずだ。共謀罪新設は「犯罪のない捜査」を必然とす
るのだ。共謀罪が生み出すものは、疑心暗鬼と相互監視が蔓延する「スパイ社会」
だ。誰もが知らない間に警察に管理・監視され突然弾圧される。密告や人を陥れるた
めの冤罪が多発する。
【11】桜田門が永田町・霞が関を制圧する                  
   
この間、贈収賄や選挙違反などが永田町や霞が関を揺さぶっている。もちろん政治
腐敗は許されるべきではない。しかし一方で、自らの腐敗を棚に上げた検察・検察
の、極めて政治的な思惑による政界・官僚組織への介入には眼に余るものがある。
 共謀罪が新設されたらどうなるか? 国会議員や官僚はよく考えてみるべきであ
る。収賄や脱税に共謀罪が創られる。またマネーロンダリング(資金不法洗浄)罪の
前提犯罪にもなる。秘書給与をめぐって永田町を揺さぶった詐欺罪や、議員辞職につ
ながった公職選挙法の買収及び利害誘導罪にも創られる。偽証罪にもできる。相談し
ただけで罪になるーこれが議員活動にとって何を意味するか?
 共謀罪法案は、会社・宗教団体・労働組合・市民団体など、あらゆる組織を対象と
している。もちろん政党・国会議員や官僚組織を対象から除外していない。共謀罪・
マネーロンダリング罪は「一つの派閥を一網打尽にできる政治的武器」(海渡雄一弁
護士)になりうるのである。冗談を言っているわけではない。共謀罪のあるアメリカ
では、罠かけ(おとり捜査)は賄賂などの公務員犯罪の刑事訴追でよく使われてい
る。共謀罪が定められているのは、ギャンブル関係を除けば主に内乱罪や自衛隊法、
国家公務員法など、いわば国家権力内部の統制、国家権力の防衛に関わる法律であ
る。「国民」すべてを潜在犯罪者と見なすことを意味する広範囲な共謀罪新設は当然
にも権力周辺の暗闘に使われるのだ。共謀罪+おとり捜査+盗聴拡大が、検察・警察
の手に渡ったとき、永田町・霞が関は桜田門に支配されるだろう。腐敗し強大化する
警察に新たなバタフライナイフを渡すな!
┌─────────────────────────────────────┐
共謀罪をなんとしても廃案に追い込もう
└─────────────────────────────────────┘
 法務省は共謀罪を新設すれば「国民をより良く守ることができる」というが
大嘘である。逆に共謀罪という毒薬で死ぬのは、監視され弾圧される労働者・市民で
ある。共謀罪は百害あって一利もない。
 2度も廃案となった同一法案の3回目の国会上程という政府・与党の暴挙に対し、
この間の
闘いの成果を踏まえ、共謀罪を永久に葬り去る反対運動の高揚を勝ち取ろう。法の生
命・実効を規定するのは、国家権力と大衆運動・民衆との力関係にかかっている。共
謀罪を3度目の廃案に追い込むには、与党3分の2議席という数の力を背景に奢る政
府・法務省に対して、「理の力」を突きつけ、反対の声・大衆運動をあらゆる所から
様々な形で創り出し、翼賛国会内での劣勢を跳ね返すしかない。今、野党・マスコミ
・反対運動の存在意義は小泉政権の暴走に毅然としてストップをかけることにあり、
負け犬のように「現実主義」に後退することではない。少数になったからといって歴
史に禍根を残すべきではない。
 待ったなしの10月特別国会攻防に集中し、共に闘われるよう強く訴える。